02


「どうしちゃったの? 三郎様」
「これ!」
「んー、コレがどうかした?」
「とってさすけー!」
「えー? …しょうがないなあ」


はいはいっ、と頭から退く…気配は無くてそのまま取ったらしい。からんって音が傍らからしたんで、今度こそ佐助の頬を挟んで…むにって掴んでやった。

…伸びねえ。何だこれ、引き締まってるって事ですかそうですか。俺の悲しいふくふくほっぺたと比べると大分違うぜ! うん、俺にだってね? 昔はこんな感じで引き締まった男らしい…すいません調子のりました。極普通の頬があったんですよー。

……悔しいから変顔させちゃおう、むにゅーって。


「いひゃいって三郎ひゃま、俺ひゃま泣いひゃうー」
「とりゃー!」


ぺちぺちむにむにと触り続ける俺と、させたいようにさせてくれる佐助。もう途中から初っ端の目的なんて忘れた俺は、いかに変な顔を作り上げるか奮闘していた。てか自分見れないのに何やってんだ? と後で気づいたんだけど、それは又のお話でお願いします…。


「あははははは! ぶひっ」
「あ、かげゆき」


俺の変顔攻撃に笑いが堪えられなくなったっぽい佐助が声を上げる。すると、俺に思わぬ援護射撃が! やるな、影雪。でかしたぞ。でも俺は見れないからどんな素晴らしい技使ったか分かんないですけど! もう一回お願いしますー!


「ちょっと!」
「…(フイッ)」


影雪に抗議の声を上げる佐助。…人の頭上でケンカしたらダメだぜ? てか、よく見るとそこいらの木陰に他の二人も居るじゃないか。…あれか? 長、サボってないで下さいって抗議?


「はあー…」


急に重みが頭から退く。すると全体重が佐助にいっていた俺はコロンって佐助へ倒れ…る事無く、隣へ平行移動が自動的にされていた。



「ごめんね、俺様の休憩は終わり」


―――旦那が来たら二人で食べな。


傍にはいつの間にかほかほかの団子と二人分のお茶が。え? 一緒に食べねえの? って首を傾げると名残惜しそうに頭を撫でてから、指で梳く様に髪を整えてくれる佐助。そんでホントにすまなそうに眉を寄せるもんだから…。もー。


「さすけ」


おいでおいでと手招きすると、何? と近寄ってきた佐助のポンチョを掴んでグイグイ引っ張った。こんな子供の力でぐらつくような佐助じゃないけど、引かれるまま頭が丁度良い高さまで下りてきて、明るい色の髪が俺の目の前に。うむ。くるしゅうない。


「おしごとがんばってね?
 きーつけていってらっしゃーい」


帰ってきたら全力で慰めてあげるから。とは口にしないけど。


わしわしってちょっと硬い髪をいつもとは反対に掻きまわした。…ちょっと楽しい。でも若干辛い。だって俺は爪先立ち。…これから大きくなるよ! 「…さすけみたいにおっきくなるからまってて」おっと、口が滑って俺の身長への野望が駄々漏れた。…佐助を励ましてるんだか、自分を励ましてるんだか分かんなくなってきたなー。


…おい待て、佐助。
何で脇に手を入れてるんです…か? 何で急に持ち上げるんですかちょっとまってぇ!


俺にとって最早お馴染みの浮遊感が! ちょっ、いつもの何倍ものGが! Gがぁあ! 首がヤバい方向にぃいい!! 幸村も佐助も何でこういう時は力加減ハンパねえの?!


「それ本当?! 三郎様!!」
「―――うぇええええ?!」


やべえ、なんかのスイッチ入れちゃった?!

よく分かんないけど感極まった佐助が俺を抱き上げて、二人一緒にぐるんぐるん。いや、ぐるん所じゃない、ぐわんぐわんだ。遊園地のメリーゴーランド高速版in猿飛佐助。一度はお試しあれ。ジェットコースター真田より酷いからコレ。うっぷ。


あ、おれ。もうだめかも。



佐助の正しい休ませ方


「三郎様、俺様すーぐにお仕事終わらせて飛んで帰ってくるから」
「…うん(ぐったり)」
「そしたらもう一回、もう一回言って!」
「…うん(どのこと?)」
「どうしよう俺様。嬉し過ぎて涙でそう」
「…うん(なんで?)」
「三郎様、今度俺様と一緒に天狐仮面しよっか! 大将も喜ぶよ? もちろん俺様も大歓迎ー、ね!」
「ううん(いや無理だから)」


良いから早くいってらっしゃいオカン。
大人しくちゃんと待ってるから。

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