03
「アレ…?」
ぱちっと目を開けると、視界いっぱいの黒。
「…よる、か?」
いや、それにしては暖かいし…揺れる。
おかしいな、さっきまで確かに俺は空腹とガチバトルという名の我慢をしていた筈なんだけどな…と思ってむっくりと頭を擡げた。
「…?かげつき、かげか、」
付き添うように並ぶ影月と影花が、ゆっくりと歩きながら交互に頷いた。
てかあれ、なんでこの二人だけ?とぼんやり考え前を見て…おお、と今更ながら納得しました。
「かげゆき…おんぶ、めずらしいね」
おおお、揺れるなーと思っていたらおんぶされてたよ、いつの間に?(てかなに俺、腹空き過ぎて意識飛んでたの…?)
夜だと思った黒は影雪の背中、どうやら移動中みたいだ。
そうかー、おんぶかー。
いつもなら抱っこ云々が当たり前だった俺はとっても新鮮な気持ち。いやだってほら、俺も一応「男の子」な訳でして…正直横抱きは勘弁してほしいんだよね!ありがたい!
「さんにんで、さがしにきてくれたの?」
「…(コクコク)」
「「…(なでなで)」」
「なんでそんなにうれしそうなの…?」
「「「…(コテン)」」」
「むー…(くそ!可愛いじゃないかお前ら!そこに直れ!撫でさせろ!)」
「「…(なでなでなでなで)」」
「むお、ぐちゃぐちゃー!」
妙に楽しそうな三人と一緒にきゃっきゃうふふ。…とは言わないけど、影雪の背にゆられながら見覚えのある景色まで辿り着き下ろしてもらう。
そこに来て「あ!」と俺はある事に気がついて叫んで、ぱふんと屈んだ三人の肩を順番に叩いた。
「どうもありがとーございましたっ」
お礼は大事なんだぜ!と首を傾げた三人に笑って言うと―――、
「ええええっ?!」
「「「…(ぎゅぎゅぎゅーっ)」」」
お返しとばかりに、珍しくも三人同時に抱きつかれたんだぜ。…激しいなお前達。
ま、いっか…。
(ちょ、圧迫してる圧迫ぅ!)
(空きっ腹にそれはキツイぃいいい!)
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