04
「かすが、…しのんでまいります!…こんなかんじ?」
「うん、大分様になってきたな」
「ほう…まるでわたくしのつるぎがふたりいるようですね」
「…な、な〜にしてんの?かな?」
「只今戻りましたでござる〜」
何処かで聞いた覚えのある台詞と共に、お手製の折り紙手裏剣がへろへろと情けない軌道を描いて畳に落下する。
それを佐助と幸村は視線で追いかけてから、投げた本人を見た。
「あ、おかえりなさい!」
「おお早かったのう!」
「じゃましていますよ」
「…ふん、もう来たのか」
それぞれ思い思いの声を二人に掛けると、いつも真っ先に子犬の様に駆け寄って来てくれる子が来てくれないのに二人は拗ねたように口を尖らす。
「ずるい…」
「ずるいでござる…」
いつもより強行軍で帰って来た二人は室内の和やかな雰囲気にかくりと肩を落とした。
「あにうえ!さすけ!みてみて!」
それを見てぱたぱたと駆け寄って来てくれたそのはしゃいだ様子に、二人は漸く笑顔の花を咲かす。
興奮からか頬を紅潮させキラキラと瞳を輝かせたその表情を見て、二人は同時に手を浮かせ頭を撫ぜようとし…空でその手をピタと止めてしまう。
真っ赤なもふもふとしたモノがその小さな頭を占拠していたからである。
「おやかたさまとおそろい!」
…どうやらお気に入りのもふもふ(お子様サイズ)を頂いたみたいです。
幸村の喉が一瞬だけ羨ましそうに鳴ったのを、佐助とかすががちゃんと見抜いていたのは此処だけの秘密である。
お兄ちゃんでしょ、我慢しなさい。と、場所が許すなら佐助はこう言っていたのは間違いなかった…。
「早かったな、…帰って来なくとも良かったのに」
「はいそこ、ちゃんと聞こえてるからー」
「かすがちゃーん」
「ん?どうした三郎」
佐助へ向けたツンとした態度を一変させ、柔らかな笑顔を浮かべたかすがに近づき何かをねだる幼い後姿。
その様子に、どうやら俺達が居ない間に大分仲良くなったみたいですね。と、微笑ましげな視線を送っている御二人に佐助は溜息を吐いてみせた。
どうせなら年の近い友達を作らせてあげたいな、等と佐助が思ったのはきっと母心…基、忍心だろう。
「みつぎ・せんこー!」
元気の良い声が庭から聞こえ、へろへろとまた紙手裏剣が地に落ちると共に賑やかな笑い声が重なりました。
本日も甲斐は平和のようです。
――また遊ぼうね!
――…ああ、
――ゆーびきーりげーんまーん…
(めいきょうしすい!ぴかーんっ!)
(おや、つぎはわたくしのばんですか)
(……(じー))
(どうしたのです?かいのこねこ、わたくしのかおになにかついているのですか?)
(くびのアレがドーナツにみえる…ひさしぶりにたべたいなぁ〜)
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