03


「ほら、着いたぞ…どうした?恐かったのか?」


いえ、やわらかすぎました。


ふわっと柔らかく目的地っぽい庭に下ろされて心配そうに頭を撫でられ…もう暫くは大福系食えないかも、なんて思っていると、

「おお、遅かったのう」

逞しく、これぞ漢!という声が聞こえてぱっと振り返る。


「おやかたさま!」


どうやらお待たせしちゃったみたいです。
その証拠に、お盆に乗せられた俺用の湯のみと団子がキチンと置かれてました。

確認した途端にきゅううっと鳴った腹の虫が凄い恥ずかしかったんだけど…、


「ふふふ…まこと、あいらしきこねこですね」

「ほう、子猫か…成程のう、はははっ」


今度は違う意味で喉がきゅううって鳴りました。や、なんとなく想像できたけどね?実際お目にかかると非常に眩いです!


「け、謙信様ぁあ…」

「けんしんさま?」


お館様へ駆けて行こうとした足がそのまま後退して、思わずうっとりと跪いてるかすがの背に隠れちゃいました。…って、背中もガラ空きだよかすがさ――んっ!!背中も美しいですね!(ヤケクソ)

もうどっちに行っていいか分かんねえよ!と上杉アタック(俺命名)にあたふたしていると、ふいに柔らかい声が俺を呼んで…どっきーんって心臓が口から出そうになりました。


「はじめまして、かいのこねこ…わたくしのなは、うえすぎけんしんといいます。」


お館様と向かい合う形でのんびりとお茶置いたその人は…なんというか、ほんとに男ですか?と聞きたくなるくらい性別不明な声で名を名乗って下さいました。…薔薇とか、飛んでくんのかな?


ぽけっ、と見上げたままで突っ立てると、そっと優しく背中を押されて前に出されてしまう。

…その手の持ち主、かすがの意図は非常に分かるんだけど、相手は軍神でしょ?

超恐れ多い俺は緊張するし、不安だしで、かすがの手を握りしめる。そのまま力いっぱいどうしよう!って念じながら見上げてしまう。
だ、だってさ!やっぱり緊張しちゃうんだもん!


「あのね、かすがちゃん…「ぐ、ふっ!」っふぎゃ!かすがちゃ――ん!」


どうせなら一緒に付いて来てほしいな〜何て思って呼んだら、突然吐血(鼻血)したかすがに吃驚しました!

ちょっ、だ、誰か――ッ!この中にお医者様はいらっしゃいませんかっ―――ッ!!!


「かすがしゃんがしんじゃうっ!」
「しにませんよ」
「はう!こころよまれたっ!」
「ふふ…、あいらしいだけでなく、おもしろきこねこですね」


大事ありませんいつものことですよ?と言って謙信さんは白いハンカチみたいなのをかすかに差し出してくれました。…あれ?出血が益々酷くなってない?てか、いつものことって…。

幸せそうにハンカチ(?)を握りしめるかすがの首の後ろをトントンしてあげながら、すっかり緊張も吹っ飛んだ(吹っ飛ばされた)俺は、ここで漸く謙信様に名前を言う事が出来たのでした…。

まえもくじつぎ
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