02
「あ、あにうえ〜、さすけ〜」
もはや涙腺崩壊寸前な俺は、居ないとは分かっているけどつい呼んでしまった。すぐそばに武田の忍さんとか、影雪達がいるんじゃん!という考えも吹っ飛んで、
…すると、
「ど、どうした、」
「ふ、え…」
もう内緒でどっかいかないから!おやつもあげるよ!と、えぐえぐ言いながら鼻水が垂れて来たころ…目の前が突然キラキラと金色に輝く。
救助!救助が来たぁあ!と喜んでぐじぐしと心の汗(な、泣いてないよ!)を急いで拭いて見上げて…目を丸くしちゃった。
うん、思わず口がぽかんと開いちゃったよ。開かずにいらんなかったよ――…なんでこの人がここにいんの…?
「坊や、泣いているのか?」
「う、」
み、見られてた!
いやだもう!そんなわけないじゃん!ね!なんていう雰囲気じゃなくって…鼻を啜る俺の目の前に現れたのは…どう見ても上杉軍の忍、かすが。
あのナイスバディーを屈めて心配そうに覗き込んでくれました。
…すいません、その角度はいたいけな子供にも大分目の毒デス…、
「お、おねえちゃんは…だぁれ?」
ドキドキする気持ちを抑えて取りあえず、一番無難な返事をしました。
うん、あんましさっきの事には触れないでやってね?優しさが今は痛いよ!
「私は…かすが、坊やはここの子?」
「うん、さぶろうといいます」
実際は上田の子です!とは言わずに行儀よく名乗って頭を下げて…途中で引っかかって不自然な角度で止まる。…引っかかってるの忘れてたよ、ビックリし過ぎて。
もっさりに埋もれたままの俺を見て、状況と原因を悟ったかすがは、ちょっと待って…ともっさりに手を突っ込んで救出に掛ってくれました――…ってぁああ!いいんだけどね!ありがたいんだけどね!!
こう、…密着とか密着とか密着とかね!?
はれんち!なんて幸村みたいな台詞が出ちゃう前に離れてくれたから、なんとか事なきを得たけど…絶対、顔真っ赤だよ…。
「…これは、」
ありがとうございます、って…離れたかすがにお礼と今度こそお辞儀をするとよしよしと撫でてくれましたー。えへへ。
そして何かを考える素振りをして俺をじいーっと、ものっそい見て止まっちゃった。んー、どうしたんだろ?
顔に何か付いてんのかな?と顔やら体をぱたぱたと叩いてみたけど、何もないよね。
…ん?何か忘れてる?…なんだっけ?
「――…お、おやつ!」
「え?お、おい!」
「おれのだんご!たべられちゃう!!」
お館様に全部食われる!と焦った俺はさっきまでおやつあげるから!と言ってたのは無し!!とばかりに突然走り出して…案の定足をもつれさせ――、
いつの間にか、柔らかいものに抱きとめられていました。
「いきなり走るんじゃない…怪我はないか?」
「はい、…ごめんなさい」
衝撃に備えてギュッと眼をつぶったはいいんだけど、どうしよう…今、絶対目を開けちゃダメだ。
また一人ではれんち!と格闘している俺をおいてかすがは何処へ行きたかったんだ?と優しく聞いてきてくれるんだけど…、聞いてくれんだけどさ、
すいませーん!!
ぶっちゃけ恥ずかしいんで下ろして欲しいです!!
…なーんて、がっちりホールドされてると言い辛くて、場所じゃなくて行きたい人の名前を言って連れて行って貰うことになりました。
高いとこなんて怖くない、怖くない。怖くないけど大分やわらかいですぅうう!!は、はれんち――っ!!!
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