道場にて 2


スパーン! と小気味のいい音と共に槍が壁にぶち当たる。
カラカラと転がった槍と痺れを感じるのか少し赤くなった手を抑え幸村が片膝をついた。

「……っ、不覚……」
「Ha! You are too stupid」
「すまぬっ、三郎……!」
「……」


ねえ、もうやめたげてー!
政宗が可哀想だから!!


もう一本、お頼み申す! と今度こそ真剣な表情で持ち直した幸村とそれに嬉しそうに応える政宗を見てやっと一息ついた俺。
直ぐに硬い木の打ち合う音が響きわたり、聞いてるとなんだか、祭囃子みたいにリズム良くとはいかないけど……眠くなってきちゃう。
飽きた、とかじゃ無い。
子供の体力を過信しないように。だって俺、良く考えなくても寝不足だもんねー。


「どうした退屈か? あぁ……眠いのか?」
「うーん……ちょっと」
「へへへっ、抱っこしてやろうかー?」
「むー」

片倉さんに顔を覗きこまれ、慶次が手を広げておいでおいでしている。それに曖昧な返事をしてちょっと考える。
だってさ、今寝たら勿体無い気がするんだよね。こう折角の休日を寝て過ごす気分で。
やっ! 俺にとっちゃ毎日が日曜日みたいなもんだけどね! よし! 言ってて悲しくなってきた! 誰にも理解されぬこの辛さよ。


「ねーかた……こじゅろさん、あれ、おれにもできう?」

片倉さんと言いかけて小十郎さんと言い直すと目元が少し和らいだのが分かった。
俺がそう言いたかったから呼ばせてもらったんだけど怒られなくて良かった。俺も嬉しいし。
で、アレ、と俺が指すのは幸村と政宗。

「ろっぽん「駄目だ」……にほん「も、危ないから駄目じゃないかなあ」……ぶー。じゃあいっぽんは?」

六爪も二槍もすっぱりきっぱり却下された。
なんでさー、いいじゃんかけちー。
二人とも目配せなんてしちゃって、仲良いなあおい。


「「佐助が(猿飛が)後でうるせえだろうし」」


ですよねー!

今はこの場に居ない過保護な保護者1を思い出して遠い目をする。あ、うん。真っ先に反対しそう。「まだ早いって!」て。
保護者2は二槍だと喜びそうなんだけどね!

しょんもりとしちゃった俺に、あっ、と慌てた慶次。少し考えてちょっと待っててと出て行ってしまった。
なになに? どうしたんだろ。もしかしてネギでも持ってくるの? まさかねー。

「これ! これだったらいいんじゃないかな!」

どたどたと足音を響かせて帰ってきた慶次の手には、


ぺっぷん、ぺっぷん


マヌケな音を出す布製の剣が抱えられていました。

……なにこれ。

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