道場にて 1
カン、カカン、ダンッ
渇いた空気に響く音。
床板を踏みきって交差する影。
片方は赤くて、もう片方は青い。
ダンダン、ダダン、カーンッ!
互いに調子が乗ってきたのか一段と激しく衝突し光を生んだ。
「三郎――!! 見ておるかぁあああ!!」
「テメェ真田ァアアア!! 集中しやがれェエエエエエエ!!!」
や、なんかもう、前見て下さいよね、危ないから
はいはい、所変わって此処は道場。
武田道場ではありません。お屋敷にちゃんと隣接している普通の道場です。
うん、俺もね、道場にいくぞーなんて言われて「え、お館様が丸太で一から建てるあの武田道場?!」って身構えちゃったけど来て見て吃驚、なんてこたぁない普通の道場でした。
もードキドキさせないでよね! でも少しだけ期待しちゃっていた事は秘密だぜ!
「あにうえー! まえ! まえみて!」
「真田、きちっと政宗様のお相手もして差し上げろ……前を見ろっ、拗ねちまってるじゃねえか!」
「あっははははははははは! まさむねあっはははは!!」
「テメェは笑い過ぎだ!」
「いてっ! ちょ、暴力はんたい!」
れっつぱーりぃ!
お決まりのセリフと共に最初はノリノリだった政宗。でもね、今は少し涙目な気もする。
原因は勿論、幸村。
始めはこれぞバサラ! これぞ戦国武将! と、いう感じで迫力満点の手合わせをしていた二人。
幸村は木槍で二槍、政宗は木刀を六本持ってさ。
そんな二人を俺はワクワクした気持ちを抑えきれない、期待の眼差しで邪魔にならないよう道場の端っこで見ていたんです。
あ、佐助はお館様に何かお使いを言いつけられて今は不在です。その言いつけた本人であるお館様もやっぱり忙しいのか仕事をしているらしい。超曖昧でごめんね。
毛利さんはさっさと一人奥へ引っ込んじゃうし、アニキはアニキで「野郎どもの所へ行ってくるぜ!」と元気に飛び出して行きました、まる。
てな訳で引き算をしていくと俺、片倉さん、慶次と夢吉で見学(?)をしているのです、はい。
慶次の笑い所がわかりません。
最初は派手なアクションにただただ驚いてうぉおおおすげえ! 早い! 幸村じゃないみたい! 政宗飛び方Gみたいだよ!(超失礼な褒め言葉)と騒いでいたんだけど今じゃアレだよ。
幸村がちらっちら俺の方を見て、俺の喜びようにキメ顔で振り返る振り返る。
お陰で政宗はイライラしっ放しじゃん!
俺の反応が珍しい(てか多分初)からって!
浮かれ過ぎだろ! あ、ほらあぶねっ! 前見ろってぇええええ!!
「ぬぉおおおおおおお!! 我が槍よ! それがしの事を見ている者がおるのだ! 燃えよ! 負けられぬぅううう!!」
「もやしちゃだめぇえええ!!」
「誰に向って言ってんだテメェエエ!! こっち見やがれっ!!!」
逆にこっちがハラハラしたんですけど。
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