好き嫌いはいけません 2


「……(う、むり…)」

ちょっと癖のある山菜。匂いは青臭さが微量。苦味が口に残るおとなの味は昔から苦手なのです。はい。


「――食べよ」

器とにらめっこしていると隣から声が掛かる。毛利さんだ。


「一口でも食せば、その忍も免じてくれるかも知れぬぞ」

我関せず、と今まで黙々と御膳を空にしていた毛利さんがぽつりと漏らす。え。もしかしてこれ、励まされてんの? フレーフレーって。うわわわわ、毛利さん……!


「おれ、まいあさにちりんおがみます……!」
「…………ふん(満更でもない)」
「……今の流れ可笑しくない? ねえ、ねえ三郎様寝ぼけてない?」
「三郎。それがしより、毛利殿が好きなのか……」
「おー。毛利が子供に懐かれるなんざ、奇跡だな」

てーれっててー! 毛利さんへの高感度が上昇致しました。レベルアップが可能です。いえいえ、兄上様がしょんもりしちゃったので後でレベルアップ願いますー。いえい!

しかしこれはとんでもない援軍が来てしまった。理由つけて逃れる事が出来無さそう……! 俺ピンチ!


――そして冒頭の「あーん」に発展。
にこにこ笑顔で食べさせようとする佐助の圧力に、俺は抵抗空しく――屈しました。ひ、一口だけだからね! 絶対絶対、一口だけだからねー!


「うえ……にがい、う、ぐすっ」
「ほら、一口食べれましたねー。もう一口位いけるんじゃない?」
「む、む、り……(ふるふるふる」
「諦めよ三郎……某も昔、こうしてこ奴に責め苦を味合わされたのだ」
「ははは。旦那は好き嫌い激しくってね。毎回引っかかれて大変でしたよ」
「懐かしい……。政宗様も嫌いなものは梃子でも口を開こうとなされなかったな…」
「あ、それ、鼻つまむとそのうち口開けるよ。その隙に入れちゃえばこっちのもん」
「!……なるほど」


幸村と政宗の好き嫌い話から、いかにしてそういう子に食わせるかという談義に発展している……!

傍から聞いてるとぞわぞわする!
こわい! オカンもオトンも怖いよう! 俺、そうまでして食べさせられたくは……ない。てか片倉さん。なるほどって…まだ政宗の好き嫌い治ってない、の? ヤルつもり?


ぶるぶる震えながら、次の一口を食べさせられるのが嫌で。味がなくなるまでずっと噛んでいた。あれですよアレ。飲み込むのも嫌って言う、ね。(佐助側からすれば口にずっと入れている方が嫌じゃないのかなと思う)


「(…うーん。ずっと噛んでるつもりかなあ?)」
「(もぐもぐもぐもぐ)」
「早く飲み込まぬか」
「……! う、……のみこんじゃった」

毛利さんの一言にビクリと驚いて飲み込んでしまった俺。


にっこりと佐助が首を傾げて箸を持ち。
片倉さんが政宗の鼻をつまんでいた。


ご、ごちそうさま――!

まえもくじつぎ
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -