人生七転び八転び
「受け取るがよい」
「……は?」
「………えへ」
さすけのまえに、さぶろうをもった もうりがあらわれた
→うけとる
はなす
にげる
待って佐助! 待ってぇ! 逃げるという選択だけはしないで下さいお願いしますー!!
ひっひっふーひっひっふー。
よし、落ち着いた所でここまでの状況を説明しよう。呼吸法が間違ってるぜへへへというツッコミは各自どうぞご自由に! 俺知らない!(にこっ)
毛利さんとのにっちりーん! を済ませちゃった俺はご飯が出来たという声にいそいそと歩き始めた。
隣に並んでいた毛利さんが歩く姿勢と歩調は優雅なのに超高速で移動を開始。擬音で書くならスタスタスターン。クールな表情だったけど、実はお腹空いてたんですね! なんて思っちゃった。
置いてかれる! と焦った俺はサイズの全然合わない、デカ過ぎる草履で何とか追いつこうと頑張った。
うん、頑張っちゃったんだよ。結果見えてるのになんで頑張っちゃったんだろう…と、今なら言えるのに!
これは無駄に頑張っちゃいけなかったんだよぉおお!ちょっとは学習しようぜ俺ぇ!
「え、毛利の旦那……うちの三郎様抱えて何してんのさ……」
「我が直々に拾ったまでよ」
「拾っ……!? うちの子は猫じゃねえっつーの! あーもー三郎様も……なんで砂だらけ?」
「……つまづいたの」
きっと人生にね!
はい出落ち! もうとっくにオチは見えてました! パラパラと着物から落ちる砂みたいに、俺のガラスのハートも細かくなるよ! 拾ってください…。
事件現場(!?)はなんと砂場。もうホント、見事に砂場ですありがとうございました状態ですごめんなさい。
なんで此処にこんな所が? と思わず眉間に皺がよっちゃうくらい吃驚した俺。
そんな俺に偶然気が付いてくれたのか気まぐれか。毛利さんが態々引き返して近寄って来てくれて。「何をしている…」なんて溜息を吐きながらも小脇に抱えて佐助ドコー?
うぅ…良い人だっ!もしかして泣きそうに見えたのかな?もしそうなら本当に良い人認定しちゃうよ?え、ええ?しちゃうよー?
「もーりさん、いいひと…!」
「あれ、毛利の旦那の株が上がってる。俺様超ふくざつー……」
「ふん、用件は済んだ、我は行くぞ」
「(え……照れて、る?はは、まさかねえ〜)」
腕を組んでくるりと身を翻した毛利さん。
うあ!待ってくださいまだ言うことが!
「もーりさん!」
「……何だ」
「ありがとーございましたっ!」
砂が落ちちゃわないように慎重に、ぺこりとお辞儀した。親切にしてもらったらちゃんとお礼いわなきゃね! もちろん笑顔だぜ!
「……次からは気をつけよ」
一瞬間があって、でもちゃんと受け止めてくれたみたいで。顔は背けたままだったけど、ちょっとだけ頭を撫でられました。凄いデコピン感覚だったけど。
えへーっと笑いながらお礼を言った俺に佐助が「三郎様、恐ろしい子…!」と思っていたなんて知らずに、毛利さんを見送った。
ゲームの印象が強くって最初は怖いなーなんて思ってたけど、人間一つ優しくされるとガラリと印象変わるもんなんです。…ごめんなさい、こっそり妖精とか植物なのかな何て思ってて。
毛利さんの耳が少しだけ赤くなってたのは佐助だけの秘密。
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