09
『 そうりゅうが、あらわれた 』
逃げる
お菓子を献上
→言い訳をする
お世辞にも良くない俺の脳内が弾き出した選択肢は三つ!(どれも何だか逃げ腰!)
よーし! 言い訳をしよう。今すぐしよう。そうしよう! …って思っていても口が開いたまま戻ってきませーん…どうしよう、俺、泣きそう。
おーけー落ち着け俺。ただちょっと青い奥州筆頭っぽい人と右目っぽい人が何故か居たってだけだから大丈夫大丈夫、あーゆーおー「おい」けぃいいいっ!!!
突然目の前にしゃがんだ奥州筆頭(仮)にビクビクッと肩が跳ねる。ちょ、おま、おっとこ前な顔だけど眼光鋭すぎんだよ!(褒め言葉)
奥州筆頭(仮)は俺を上から下までじーっくりと見て、顎に手を当て何やら考え始めた。
その間俺は蛇ならぬ、竜に睨まれた蛙状態。ハッキリ言って居心地が悪いとかそんな生易しいもんじゃないぜ。
しーせーんーが、つーきーさーさーるー。
「Hm……お前、真田の弟だろ、三郎…だったか?」
「……?」
得心顔で呟く奥州筆頭(仮)に何とか頷いて、その呟きにあれ?と首を捻った。そういや俺、こいつと会ったことあるっけ?名前まで知ってるってどういうこと?
…そりゃまあ、俺の第一声っていったら「れっつぱーりぃー」でしたけどね? 別に直で会った事は無かったと思うんだよなー。俺からしたらチラリと遠くから見ただけだよ? マジで。
「Ah―、そんな不安そうな顔すんな」
目が零れるだろ、と言って頭をぽんぽんされてしまい益々固まる。最早、口も目も開きっぱなしの超マヌケ面だ。
それを見て、頭をガシガシと掻いて極まり悪そうな顔をしたその人は、突然俺の両脇に手を入れて…ひょいっと持ち上げてしまった。
途端にぼとぼとっとお菓子が落ちて、その場にシーンとした空気が漂っちゃった。
「……」
「……」
や、何かすいません。
不可抗力です。
「政宗様…その子供は、」
「間違いねえ。真田幸村ん所の末だ」
見ろよ、そっくりだろ?と言ってぶらぶら不安定な状態の侭だった俺を腕に乗せてくれました。が、それでも竜の右目(確定)を見上げる形。……視線が合わせられないんだよね。
物理的な意味もあるんですけど…、
「俺は政宗だ、コイツは小十郎」
「あの、はじめまし…て?」
「…ああ、」
もの凄い目で片倉さんが見つめてるからです。
穴開きそうな程見つめて下さるのは構わないんですけど(いや、構うけど)、凄く居た堪れないよお!どうしたのこの人!うおーっ、怖ぇえ!!
(あれ?今、小さい声で「座敷わらしじゃねえのか」って聞こえ、た?)
「……小十郎、そんなに睨むな。泣きそうじゃねえか」
「は、申し訳ありません。その様なつもりは無かったのですが……」
怖がらせてすまねえな、と言って視線を緩めてくれる片倉さん。や、いいんですけどね?
いいんですけど年上に謝られるって、こう、お尻の辺りがムズムズするっていうか…なんつーか。うーん。
「あの、こじゅろさんは、わるくないです」
何か申し訳無くって、違いますよー!って伝えたくって口を開いたら、三つの眼が俺を見ちゃった。それにビクッてなるのを気合いでカバー(…出来てたら良いなぁ)しながら、
「おれ…なかないよ? おとこだもん」
にへーと笑顔で片倉さんを見上げる。マジ気にしないで! 大丈夫だよ! もう怖くないし。
多分。
……あ、れ?
反応、無し? それもそれで悲しいんですけど(…ホントに泣いちまうぞ、おい)
佐助だったら、幸村だったら…面白いほど反応してくれんだけどなぁ。…そういえば、あの二人はどうしたんだろ。お館様も見ないよね…? 寂しいと三郎は死んじゃうんだよ! んもー…。
なーんて一人考えていると、
「小十郎…」
「はっ、」
「これ、持ち帰えりてえ」
“これ”扱いされて、不穏な単語が政宗の口から飛び出す。それに、はあ?と思って政宗を見上げると、とっても素敵にニヤリと笑んでらっしゃいました。……どうした、奥州筆頭。片倉さんも呆れ顔だよ。
取りあえず、降ろして下さーい。
(何だ、仲良いじゃん)
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