08


女の人のパワーって、凄い。



「あら、ほっぺたぷにぷに」
「本当に。でも何か足りないような気が。何かしら?」
「んふふっ」
「まあ。用意がいいわねぇ、貴女」
「はーい、動かないでくださいまし」
「これで兄上様とお揃いに御座いますよ〜」

「……あの、」
「「「良くお似合いで御座います」」」
「ぅあい……」


すいませーん! 何でそんなにウキウキと紅い鉢巻を取り出してんですか、お姉様方ぁ!



あ、ども。言わずと知れた何者でも無いただのお子様三郎です。只今装備品として真っ赤な鉢巻(追加スキル:熱血)を頂きました。しかも何故か六文銭じゃなくて武田菱が入ってます。

ポンチョ+鉢巻って、俺はどんだけ幸村達が好きな風に見られてるの?


――あれからお姉さんに案内されてやって来たのは大きな広間。

あっという間にもみくちゃならぬ抱きくちゃ(?)にされ、お手伝いに来た筈なのに何故かお菓子とお茶を貰って座布団へGO! 状態に。

ん、んん? ……あれ?お手伝いは? と思わず首をこてりと傾げちゃう。ぱたぱたと忙しそうに準備している女中さん方の真ん中で「饅頭うまー」って言ってるだけなんですけど、なにこれ?


「あの、おてつだいは」
「はい、これもお手伝いです」
「でも」
「どうぞこれも食べてみて下さいませ」
「あ、はい」


ってまた貰っちゃった! 意志弱いなぁ俺!!

こんなやり取りを続けてたから、既に俺の両手は貰い物のお菓子でいっぱいいっぱいになってしまっている。てか両手にも乗り切らないんですけど。ぼろぼろ溢れてるよ? 寧ろ撒き餌状態なんだけど!

お供え物をされるお地蔵様の気分だぜ。しかも一礼二拍手ならぬ、一声二撫で状態だよ。


代わる代わる皆さん「可愛い」とか「癒されますわ」と言ってくれてるんで、ある意味お役には立ってるみたいなんだけど。
うん、美人さんばっかりだから大分恥ずかしいんですよ撫でられんのも。


……。


……あれ? これってもしやハーレムってやつじゃね?
(まさかの男のロマン! だが恨むぜ、俺のお子様ボディー……)


「キッキィ(ぽんぽん」
「あんがと、ゆめきち」
「キー」


うん、優しさが痛いよ!


悔しがる俺を余所に、口の周りを餡子だらけにしながらも夢吉は慣れてるのか愛嬌振りまくってる。ううっ、慰められるなんて涙が出そうだぜ……あれか、モテ男(慶次)の傍にいると自然とそうなるんですか? モテ吉さん。

上田は幸村があんなだから、あんまり女中さんが周りに居ないんだもんな〜。
寧ろ忍とか忍とか忍ばっかりだよ! ある意味アレもハーレムだよね!
よし、言ってて悲しくなってきた!


――と、心中複雑な感じできゃっきゃうふふ(?)と過ごしてた俺はこの時、とっても重要な事に気が付いて無かった。


段々と減っていく女中さん達

上座に据えられた座布団

それを囲むように配置された幾つもの座布団

そして中央の俺


よくよく周りを見渡していたら絶対気がついた事なのに、女中さん達ときゃっきゃ以下略だったお陰で全然気がつかない。
だから、



「あ、お越しになられたわ!」


その一言で、今まで囲んでくれていた女中さんが次々と離れていく。一番最後にあのお姉さんがにっこりと、

「では、頑張って仲直りさせてあげて下さいませね?」

もの凄くいい笑顔で障子をぴしゃりと閉められても頭ん中は「?」でいっぱいな俺は、一人取り残されて目を瞬いた。


はい? 頑張るって、何を?
仲直りって、誰と誰を?


――スパァンッ!


何処ぞの兄上の如く、破壊音に近い音で開かれた障子。其処から現われたのは、

な ん で こ の 二 人 が 此 処 に !
 甲 斐 に い ん の ? あ っ れ ー ?


「ったく、アイツ等どうしたってんだ?」
「政宗様! 御一人で先へ行かれては」
「Ha! 別にいいだろ? 客を放って熱くなってやがる連中が悪ぃんだよ」
「ですが!」

予想外の二人は互いの事ばかり見ている様で室内の様子に気づかない。
いやマジで気がつかないで下さい! 結構です! という願いも届かず。

「Ah…………おい、小十郎」
「どうかなさ……」


……バッチリ目が合った。


まさか喧嘩してるのはこの二人、じゃないよねえ?

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