07


ぺたぺたぺたぺた、ぱたぺったん


「……よし、おってはいないみたい」


右見て、左見て、長い廊下の端から端へダッシュして、また身を隠す。

別に悪いことしてるわけじゃないから足音忍ばせる必要も無いんだけど、気分的に俺忍。でも、佐助とか影達みたいに静かーに歩けないからすっげー間抜けな足音を立てて歩いてます。

……うん、オカン手作りの迷彩ポンチョ着ても無駄な足掻きだったよね! アレ着れば忍スキル身につくと思ってたよ! ……俺の固有便利アイテムじゃなかったんだ。


「キッ!」
「しーっ、しずかに! おんみつこうどうちゅうでござるぞ」
「キキッ、」
「うむ、ゆめきちたいいんはゆうしゅうだな!」
「キッ!」


やべえ、超可愛い奴め!
俺とお揃いで、迷彩の布を首に巻いてあげたからお前も忍べない忍者なんだな!
忍猿夢吉、まかり通る〜とか?


物珍しげにきょろきょろと確認しながら奥へ奥へと進む俺with夢吉。
二人で若干のノリを交えつつ、ちょこちょこと移動する姿は多分結構マヌケ。


だって佐助は帰ってこないし〜幸村は忙しいみたいだし〜、慶次は寝ちゃったみたいだし〜で相手してくれる人もいない俺は夢吉に守られ(?)ながらお館様ん家を目下探索中であります! 隊長ぉお!!


時折忙しそうにすれ違う女中さんがクスクス笑いながら何度も振り返ってくんだけど……そんなに可笑しいかな? てかやっぱりモロバレ? 忍べてませんよね?わかります。

――実は赤い着物に迷彩ポンチョっていう組み合わせが物凄く目を引いて、尚且つ頭の上に子猿乗っけてちょろちょろしているその姿が館中の女中さんの間で既に広まっているなんて知らない俺。

次は誰が擦れ違う? なんて話が水面下で交わされているとも知らずに呑気に、忙しそうだな〜……なんて思っていた。


「キッ、キキッ」
「うん? きょうはなんかあんの?」
「キィ〜」
「そっか〜、おとなはたいへんだなぁ」


流石夢吉さん、慶次の相方務めるだけあって会話が弾む弾む、なごむなごむ〜。

てかね、俺たちに向けられる視線はなんか温いんだけどね、女性陣がホントに忙しそうなんだよな〜、……俺よりも足音立てないのに何でそんなに速いんですか?

もう隠密ごっこは止めて(てか元々そんなに隠密になってなかったけどね!)俺暇だし、お手伝いとかしてあげたいけど…。


チラリと自分の紅葉みたいな手のひらを見て溜め息が出る。果たして三歳児に出来る仕事があるだろうか?

邪魔になるだけだったりして、でも……うー、



「あ、のっ」

丁度目の前を通り過ぎようとした女中さん(吃驚した、超美人さん!)に思い切って声をかけてみた。


「はい、どうなされました?」


うお、目線あわしてくれるとか優しい!と思いながら、

「おれにも、なんかてつだうことありますか?」

と腕をピシッと上げて聞いてみました。

頭の上で夢吉も上げてるのがわかる。猫の手ならぬ三郎の手はいらんかね?みたいな気分です。

そしたら、


「まあ、可愛らしいお手伝いさん。ありがとうございます」


そう言ってにっこりと笑ってくれました。花が飛ぶ幻覚見えそうなくらい実に眩しい笑顔でした。美人の笑顔は宝です。

……お、おおもしや朝の味噌汁はお姉さんが作ったんですか? 兄上んとこ嫁こない?そしたら俺得なんですけど! 毎日貴女の味噌汁が飲みたい!(あれ? プロポーズ?)


すると、お姉さんは可愛らしく指先だけで俺を手招く。内緒話するみたいな距離に、まるで一緒にイタズラをする気分になってつられる様に俺も笑っちゃう。


「少し難しいかもしれませんが、大切なお仕事がございますよ?」


お願い出来ますか? と聞かれたらやっぱり俺も男。Ladyの頼みは断るわけにはいかないぜ! 例え難易度が高くてもね!


此方へ、と歩き出したお姉さんの後を着いて奥の、そのまた奥へと進んで行きました。なーんか、嫌な予感。



やっぱり簡単な感じでお願いしまーす。って言ってもいいかなぁ?

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