06


朝・夕共に真田家の食事は味噌汁から始まる。


一口目を口にしながら某は残念な思いで一杯であった。

普段であれば今頃は共に並び楽しく朝餉を食していた筈、であったというのに。そう思うと同時に某の口からは溜息ばかりが洩れる。


「はあ……」
「Hey! 何を辛気臭い面してやがる」
「政宗殿」
「まさか小十郎の味噌汁が不味くて飲めねえって言うんじゃねえだろうな?」

同じく椀を持つ政宗殿が某の溜息を見て勘違いをしたようだ。

今朝の味噌汁はいつも頂くモノと違うと感じていたが、なんと、片倉殿が作られたものであったか。

「いえ、大変美味でござる!」
「Ha! 当然だろう!」
「政宗様、頬に米粒が付いております」


片倉殿に指摘され、頬に手をやる政宗殿。
政宗殿もまだまだ子供でござ「旦那も付いてるよ」むぅ、佐助め、まっこと出来た忍よ。


今この場には某の正面にお館様が座わられ左前には政宗殿が、その隣には片倉殿が座っておられる。
右前を見れば元親殿(何故、少々ボロボロなので?)が、そして毛利殿という並びで朝餉を共にしている。


「所で真田「おい毛利! テメェ自分の食えよ! 自分の!」」
「テメェの忍「フン、貴様が食べぬから我が食したまでよ」」
「ドコに「アアン!? 最後に食べる為にとっといたに決まってるだろうよぉ!」……」

「テメェ等「おい、政宗様が何か仰ってるんだ静かに聞きやがれッ!」……ッ小十郎」


政宗殿が某に何かを言いかけてるが、瀬戸内のお二人が何やら言い争っていて全く聞こえぬでごさる。そんな二人に片倉殿が一喝するのを、佐助から三杯目を受け取りながら眺めていた。

食事中に騒ぐと佐助に怒られるでござるぞ?幼い三郎とて食事中は静かでござる。



「shit! ……おい真田、テメェん所の派手な忍びはどこ行ったんだ?Ah?」

その言い様にはて、と首を傾げる。


「何を言っておられるか、佐助ならば此処に……」

――其処まで言って気付く、そう言えば今朝の佐助は妙に口数が少ない。ジッと見つめればサッと視線を反らされる。

もしや佐助!


「抜け駆けは許さぬぞ! さすけぇえっ!」


クワッと眉間に力を入れ、しゃもじ越しに佐助の顔面に拳がめり込み襖に吹き飛ぶ。ボフッと音を立て分身が消え、それを確認せずして振り返った。


むぅ、某を差し置いて羨まし過ぎるぞ!
さすけぇえええ!!




「おかわり!」
「俺もおかわり!」
「キキィッ!」

俺に続くように慶次と夢吉が元気良く茶碗と手を上げる。慶次はもう四杯目だけど、お腹大丈夫なのかな?

味噌汁超うまー、って言ってる俺の隣には今朝(てか、ついさっき)再会しました前田の風来坊こと前田慶次with夢吉! 何か、結局ここに泊まってたみたい。存在忘れててごめんな?二人とも。


「まつ姉ちゃんの飯が一番だけど、この味噌汁も美味いな! いい嫁さんになれるぜ!」
「なれるぜー!」
「キィッ!」

いやマジで!
超うまーなんだけどコレ! 俺、生まれてから上田のご飯しか食べたこと無かったからな〜。うん、この味噌汁作った人の旦那さんになる人は幸せ者だよ。


「しっかし、忍の兄さんはどこ行ったんだい?」
「さすけ?……うーん」

そうです、さっきまで佐助が居てご飯をお世話してくれてたんだけど…突然青い顔して消えちゃったんだよな…どうしたんだろ。アレか?あらやだ鍋かけっぱなしで来ちゃったー、みたいな? どんだけオカンなの?


オカンが消えるのと入れ代わりに影達が現れてお世話をしてくれてるから問題無いっちゃあ無いんだけどさ、

ここって一応よそ様のお宅だし?兄上だってなんか忙しいみたいで朝一緒にご飯食べてくれない位だし?(別に? 拗ねてないよ! 全っ然、拗ねてないからね!)

つーかさ、ご飯食べ終わったら俺また何していいか分かんないんだよね〜と、うんうん言ってる間にお腹いっぱいになった俺達。

――じゃあ一緒に、おててをぱちんっ!

「「ごちそうさま(でした)!」」


食べたらする事も特に無いんで重たいお腹を抱えて慶次と夢吉と一緒に、のんびりゴロゴロしてたら女中さんに「あら、兄弟みたいですねえ」って笑われちゃいました。(すみません……それは慶次とですか?夢吉とですか? 凄く気になります)

そういや、うちの兄上ってばああ見えて忙しい人だからなあ。こうやってのんびりゴロゴロはして貰ったこと無いかも。主に佐助とか、佐助とか。

ちょっぴり寂しく思いつつ慶次の髪を弄るのに飽きて来た頃…遊びたい盛りの子猿こと夢吉がぐいぐいと袖を引っ張ってる。

多分庭へ出て遊ぼうよ! って誘ってくれてるんだろうけどね、俺的には今朝の出来事が頭を過ぎっちゃうんだよな。


「じゃあ……ゆめきち、おれをまもってくれる?」
「キィッ!」
「ははっ、まかせろってさ」


マジでか夢吉さーん! 超頼れる!!
おーけー! 一人じゃなければ大丈夫…ってそう考え、うたた寝を始めた慶次を置いてパタリと戸を閉めました。風邪引くなよ!



さぶろう! しのびまいるー……なんちゃって。

まえもくじつぎ
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -