04


「わお」

デカい、全てにおいてデカい。や、庭もそうなんだけど。


(これ……誰だ?)



――バシャバシ「うおっ!? つめてぇっ!!」



豪快な音と一緒に水飛沫を飛ばして、目の前の人は顔を洗った。みたいなんだけど……水が相当冷たかったらしくブルブルと震えだした。

最初は、髪に水が跳ねて銀髪がきれいだな〜って思ったんだけどさ、

うん。この人、上着くらい着たらどうなの!? なんで上半身裸なの? 甲斐の寒さなめてんの? 俺は身をもって知ったけどね!


庭を一人で寂しく散策中に音を聞きつけ、井戸に立つその人を見つけた途端に咄嗟に隠れた(び、びびびってないし! 俺全然びびってないよ!)俺から見えるそのデッカい人は、お館様とどっちがデカいか気になるくらいデカい。

裸だけど。

てか、やたらとムキムキしてるんだけど。


「ん……?あれ、どこいった?」


え、俺っ!?

……じゃないみたいで、手をぱたぱたと振り回して何かを探し始めた。もしかして手ぬぐい探してんのか?


お探しの手ぬぐいは多分元あった場所から落ちたんだと思うんだけど…地面で砂だらけになった状態でデッカイ人の足元にあるのが俺から見えた。
(てか、デカ過ぎて足しか見えない)


え、あれって発見しても使えないよ、な? ばっちいって、使ったら怒られるぞ?
佐助に。



未だに発見出来ないでいる現在進行形で困ってる人、とそれを影から見ている俺の手には手ぬぐい(オカンによる名前入り)
さっき佐助に持たされたこれがあるにはあるんだけど……。


うん、貸してあげたいけど
ぶっちゃけ怖い


どうしようって一人おろおろしている俺を急かすみたいに「ぶぇっくしゅんっ!!」って豪快なくしゃみが聞こえてきた。
ちょっ!! なにそれ!! 急かされてるのもしかして!?

終いには何だかぶるぶる震えてる様に見えてきてすっごい可哀想になってきた。


よし、わかった。この人はアレだ、武田軍のあの巨人兵なんだよ。名前忘れたけどあの棍棒みたいなの振り回してたあの兵隊さんの中の人なんだ、そうに違いない……って
余計こえーよ!!


もしかしたら、俺、死亡フラグ立ってますか?


「俺、今度の戦争が終わったら結婚するんだ」
「マジかよ!ケイン!おめでとう!」
「へへ、ありがとな?」

「ケイン! ケイン! ばかやろう!
おまえ、結婚すんだろ!? こんな所で死ぬんじゃねえよ!」
「へ、……ドジっちまった、ぜ(ガクッ)」
「ケ、ケイ―――ン!!!!」


「ケイ――ン!!(泣)」



「なんだあ!?」


――ズシャーッ、


よーいドン! の勢いと脳内死亡フラグに最早涙目な俺はダッシュで巨人兵(仮)に突進。
なんだと振り向いたその人の足元を通り過ぎた――のに気付いて戻って、

「はい!」

と、高い位置にある手にバトンの要領で渡した。


「え、おいっ」
「おきづかいなくー!!」


任務完了! とばかりに敬礼して元来た道を戻ろうとして振り返って、急に首が詰まって息苦しくなる。


「おい、ちょ「に゛ゃ―――!!!」待てって」

捕まったぁああっ!?と一気に青くなった俺は、俺は……、



「か、かげゆき―――!!!」


へるぷ! っと叫んでぎゅうって目を瞑った。と、思ったら突然の浮遊感。


「あ、う……」


目を開けたら俺を抱えて心配そうに覗き込んでいる影雪がいて、空が近かった。


「……(なでなで)」

「うぅ、かげゆきぃ〜」


うぅおおおっ、こえー! 木の上かよぉ!! 高くて怖いけど! 怖いんだけど、



「たすかった……うぐっ、」



(出来たよ〜って三郎様っ!? どうしたの!?)
(しゃ、しゃす、け……(言えない! 恥ずかしくて言えない!))

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