09


もふもふ、ぽすん

もふもふもふ、ぽすんっ

……。


「お、おぉ〜」


なんだコレ、ヤバい。
癖になりそうだ。


 もふもふ、ぽふん


「はしゃいでるねぇ」

「ワシには見えぬが、楽しそうじゃのう」

「うらやましいでござるぅ〜」


イエス! アイムフリーダム!
勝手知ったる(?)お館様の兜の中から中継してます、三郎です!

団子をしっかり頂いた後、やっと武器を外してもらった幸村と何故かちょっと焦げてる佐助がお館様の前に整列するまで遊んでもらっていた。基、遊んじゃってた俺です!


お館様は座っているのに山みたいにおっきくて、正に虎。(模様も相まって虎が座ってるみたいなんだよな!)

佐助が離れた時(幸村の世話に離れた時)最初の印象が強くて、2人っきりという状況にちょっと尻込みしそうだった俺。
でもさ、ごめん。


俺は誘惑に負けました。
え? 何にって?


もふもふ! にですよ。


だって、もふもふ!
このもふもふ! がたまらないんだよ! 暖かくて、気持ちいいくて、ずっと埋もれていたい。

多分、魅惑のもふもふなんだよこれ。


そう主張する俺はさっきからお館様の後ろから抱きついたり、もふもふをわしゃわしゃしたり、すっかり堪能してます。

だってさ〜、お館様全然嫌がんないしさ、てか寧ろなんか嬉しそうに笑ってるんだから、思わず調子にノっちゃうよね!


「そんなにおもしろいかのう?」

「うん、すきっ!」

「そうかそうか、わははははっ!」


豪快に笑うお館様の揺れで、後ろにしがみついていた俺もユラユラと揺すられる。

くっ、この振動。
今正に、腹一杯状態の俺には悪魔の揺れだ。
はっきり言おう、この心地良い揺れが生み出す効果は、


「……めがおもい」


うん、ぶっちゃけ眠いです。


やだなぁ、まだ着いたばかりだっていうのに。じいちゃ……お館様とだって会ったばかりなのに、失礼になっちゃうよな?
もふもふで寝ちゃうとか。

だけど、俺の意志とは反対に頭がぐらぐらと傾き始める。どうしよう、と回らなくなってきた頭で視線を巡らすと──居た。

隅に座って、なんだかコソコソと話し合う二人の保護者を(忘れてた訳じゃないぞ!)


「ねえ、旦那」
「どうした、佐助」
「俺様何だか心配になっちゃった、見てよあの大将の顔。スッゴいデレデレ」
「む、むむ……佐助」
「(俺様の)三郎様、大将にとられちゃいそうで「さすけー(ボフッ)」あはー、心配無用みたいだね」


「そ、某の方が心配だ! 某の三郎っ!」

「(無視)なに? 三郎様?」

「う……」

「「う?」」


いやそんな、ハモらなくても。

ふらふらっと勢い余って佐助の腹にタックルしちゃった俺は、もうダメみたいです。
くそ、悟って欲しいと思うのは我が儘ですか?

オカン、兄上。

ぐりぐりと頭を擦り付けて主張してみる。
頼む、通じ「もしかして、眠いの?」た────ッ!!

以心伝心、猿飛佐助!(違う)
そうなんだ! 俺眠いの、何とかして!

実は力が入んなくなってきてて、必死な俺はブンブン頭を振って肯定を示した。その途端、反転する視界に目が回りそうになる。
ちょ、今そんな事されたら。


「はい、旦那。落とさないでね?」

「む、承知!」

「しー、静かに。何か寝そう……じゃ俺様、布団敷いてくるから旦那が連れてきてね」

「あい、わかった」(小声)

「まかせたよ、じゃ大将。そういう訳で、」

「うむ!」

「だから、静かにって言ってるでしょ!」(小声)

「うむ」(小声)


最早、俺の意識はブラックアウト寸前。

だらりと投げ出した体を佐助から受け取った幸村が、慣れた手付きで抱き上げる。それが妙にくすぐったくて方向も分からぬままにお館様に手を振る。

あー、通じてるといいなぁ。

そう、意識の端で何とか考えた所で真っ暗闇に包まれ、俺は意識を手放した。
ごめんなさい、また明日。


(むにゅ……)
(そ、某の……(ジーン))

(旦那、早くね?)

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