07


おーけー、落ち着いて状況を確認しよう。


スタスタと音を立てずに歩く佐助の腕の中。
俺はまるで死刑台にでも連行されて行くような気持ちで、正直いっぱいいっぱいです!

待て待て待て、どうしてこんな状況に?



結局転んだままだった俺を引き起こしたのは慶次で。

ありがとうと言うまもなく、グイッと突き出されたのはオカン mo to i 佐助の前で。
アイツったらもう爽やかな笑顔で「お忘れ物だよ!」とぽかんとする佐助に告げてしまった。

そしたら案の定、瞬時に事の次第を悟った佐助に奪われた俺。


にこやかに佐助が、

「わー、ありがとう。でも、簡単に触んないでくんない?」

て言ったけど、
言っちゃったんだけどね?
如何せん言葉の棘が


手に持ったままのおたまがギッシギシ逝ってて、思わず「ひぃ〜っ」て口から出そうになっちゃったよ!
落ち着いてオカン! ほら深呼吸深呼吸、ヒッヒッフー!!

という流れで、今の連行に繋がる訳なんだけど。ぶっちゃけ無言な佐助がこわいよー!
泣いちゃいそうだよー!!


一人、腕の中でぐしぐし言い始める俺。
(混乱の境地)

人間泣きたいときだってあります! 恥ずかしいなんて、思う暇もありません!!
落ち着け? 冗談!
泣くのが子供の仕事ですよね!?


「……はあ」

ピタリと突然足を止めた佐助。重い溜め息をついて突然俺を降ろしてくれる。

「……さすけ?」


なに、目的地に着いたの? 俺、怒られる? 怒ってますよね? ごめんなさいお母さん。

不安と疑問と涙を含んだ瞳で見上げると、目の前がしゃがみ込んだ佐助でいっぱいになる。

いよいよ怒られる! と覚悟を決めて俯き、ギュッと着物を掴んで構えていると、


「三郎様」

「う……は、い」

「反省してる?」

「……(コクリ)」

「そっか」

「おこんないの?」


おそるおそる見上げると、困った様に笑う佐助と目が合う。
もう一度怒んないの? と聞けば、反省している子をこれ以上怒れないよね。とのお言葉。

お、オカン! 正にオカンだよこの忍!
よっ、飴と鞭!(褒め言葉)

(ま、悪いのは連れてきた風来坊だからね)と佐助が思っていたとはつゆ知らず、何気に躾されている事にも気付かずに俺は感激のあまり佐助に飛びついていた。


「じゃ、そろそろ行こっか」

「へ?」

わーい! なんて言いながらひとしきり佐助の首にじゃれついて、色んな事が頭の中から吹っ飛んだ頃。

突然宙に浮いたと思ったらそんな事を言って、また歩き出した佐助。


……。

え?

ええ?

どこに行こうというのかね──ッ! はははッ!

なんだか懐かしい某ム●カの台詞を思い出し、キョロキョロと辺りを見回す俺。


「そんなに不安そうにしなくても大丈夫だから、こうなったら大将にも目通りしなきゃね」


たいしょう? TAISYOU?
大将!?
そ、そそそれってッ!?
ま、ままままさか!!


「ま、お館様も優しい方だから大丈夫だからね〜」

「ぅあい……ぐすっ……」


***


──ザッザッザ、

三人とちびっ子が一種のこう着状態を抜け出した中、甲斐へと近づきつつある影があった──、


一人は銀髪に半裸。
楽しそうに笑いながら追従する部下を振り返りつつ進んでいた。

対するもう一人は、不機嫌そうに真一文字に唇を引き結び、男を極力視界に入れまいと馬上であるにも拘らず瞳を閉ざす。

眉間に輝くは、不快を表す深い皺。

隣に並ぶ大柄な男がその立派な体躯を仰け反らせながら笑うと、その皺はより一層深く刻まれる。


「何故、我が鬼めなどと……」

「がははははっ、本当かよ!」

「……(ピキッ」


憂鬱そうな溜め息がその唇から漏れた時、更なる大声で騒ぐ男に眉間が益々深く深く刻まれていく。

そして、

チラリとも見ずに男は、無防備になったその腹に手刀を無言で繰り出すことでストレス解消を計っていた。


「いってぇ────ッ!」
「フンッ」


(続々と近付く、新たな出会い)

まえもくじつぎ
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -