06
「完全燃焼ッ!」
「どっこいしょー!」
旦那の体から炎が陽炎の様に纏い上がる。
対する風来坊は、憎たらしい程に爽やかな風を纏わせ笑って構えた。
あは、すっごくムカつくんだけど。
勘弁してよねー、フラフラたまに甲斐に来ちゃあこうやって俺様の仕事増やすの!
今の俺様には癒やしてくれる存在はいないんだからさ!(三郎様とか三郎様とか三郎様とかさ!)
あ゙ーッ! もう!
何で思い出しちゃったんだろ、やだな〜心配になっちゃったじゃん。(思い出すと沈んじゃうんだよね)
泣く泣く上田に残して来たあの子をさっ!
イライラと風来坊に手裏剣を投げれば弾き返される。連続で浴びせ続ける中、旦那が奴の得物を弾き落とした。
旦那の刃が風来坊に届くかと思われたその時、
視界の端を、ここに在るはずのない見慣れた色が過ぎった。
(見間違うはずない、だってあれは)
「……うそ」
ズベシャーッ!
はいはいはい。
仕切り直し仕切り直し、今のなしなし!
やだもう! なにこれ!
台無しも良いとこだよコレ────!?
慶次のピンチにカッコ良く飛び出して、武器が届くギリギリに(あくまでもギリギリです! 俺には当たらないとか勝手な法則です!)立ちはだかろうとしたんです! ホントデス!
な、の、に!
「いたい……」
うん。
転びました。
そらあ、見事に。しかも飛び出して直ぐに。
舐めてたよ、三歳児の手足の短さ。(非標準サイズ)
ううっ。泣きそうに痛い。
(心も体も!)
「さ、三郎様……!?」
佐助の声が俺を呼んでいる。が、恥ずかしくて顔を上げられねぇ。
ちょ、待ってくれよオカン。そんな吃驚した声で呼ばなくても俺は何処にも行かないぜ。ただ、硝子のハートだっただけだよ……。
──だけど、何時までもこの状態でいる訳にもいかず、恥ずかしいが恐る恐る顔を、上げた。
上げ……、
そう、顔を上げたんです。上げれば勿論、進行方向にいた幸村が見えるわけで…。
「あにうえ、「さ、さささ三郎! なな何故、ここにッ!」……」
おい、動揺し過ぎだ。
しかも武器を背後に隠してたりして「某、何もしてないでござるぅ〜!」とか言っちゃってるし!
超背中から見えてますけどッ! 飛び出してるからね! どんだけ隠すの下手なの!?
あせあせと挙動不審な幸村から、今度は佐助へと視線を移す。
──が、
何で佐助の武器がおたまとしゃもじに変わってるんでしょうか!?(まるでそれが、お楽しみ武器かの様にしっくりと……)
よーしお前ら、前出ろ前へ。
もう、何なんだよ。そんなに見られたく無かったのかよー。地味にショックだぞ!
(エロ本見つかった中学生みたいな事してんな! ……でも、アレはショックだよな)
「さすけ」
もう俺、怒っちゃうもんね! と意気込み、佐助(保護者)の名を呼んだ。…うん、呼んだんだけどさ。
そんなに悲しそうな顔しないで────ッ! オカーンッ!?
ちょ、俺がなんか泣かしたみたいじゃん! いじめ、いくない! ってちがぁぁぁッ──!!
怖くない、ほら怖くない……ね? ねッ?
一人で泡食ってる俺は助けを求めて幸村(非保護者)を振り返った。
振り返って、後悔した。
上着に槍を隠して、不自然な形に異様に盛り上がった幸村が、
いた。
…見なかった事にしようかな。
(しかも刃先が下だから地面に刺さってたり)
(つか俺、転んだまま)
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