05
ズシャァァァ────ッ!
土煙を後方へと巻き上げながら、真っ赤な塊が前方を滑り去って、……戻ってきた。
相変わらず、熱い奴だなぁ。
「慶次殿ぉ! 何故に今、この時! この甲斐へと参られたか知りませぬが──この幸村! お館様の命により、全力でお相手いたす!」
「へへ、そーこなくっちゃっ!」
「いざ、いざ、いざぁッ!」
肩に担いだ超刀を力の限り振り落とせば、吹き荒ぶ風が熱気を纏い、新たな渦を巻き起こす。
さあ、楽しい喧嘩を始めようか!
あ、お邪魔してます。
いえいえ、お構いなく。いつも兄上がご迷惑をお掛けして。
え? そんなこと無いですよ。
普通です、普通。
この顔の原型は兄上ですし。
(何の努力も無しにジャニ顔とか有り難いけど)あ、いえいえ、こっちの話です。
……。
……。
うん、ごめん。和やかに武田の忍さん(意外と気さくだ)と話してる場合じゃないよね。知ってる。
……でもさ。
がしゃーん! ガラガラ!
「ぎゃーッ! 旦那ぁ! 壊さないでーッ!」
ぶっちゃけ、あっちに逝きたくねぇ。
薄情と思う無かれ、だって俺、ただの三歳児だもん!(中身はどうあれ、見た目はね!)
こんな感じで避難(現実逃避)している俺は、現在物影よりじっとチャンスを伺っているのです。(決して、逃げてる訳じゃないやい! 人間の本能だもん! ってか! もんって俺、似合わねー)
「かげゆき、かげつき、かげか」
「「「……シュッ!」」」
「あれ、いつおわるの?」
「「「……コテン」」」
おいおい、可愛らしく首を傾けんじゃねーよ。(許すよ? 許すけどねッ!?)
俺に無い可愛らしさを振り撒きながら、一緒に隠れてくれるこのノリの良さ。
端から見れば重なる様に覗き込む姿は、まるでトーテムポールとか、ブレーメンみたいだ。(もちろん俺は一番下)
未だに炎やら風やらをバンバン放っちゃってる二人と、攻撃を加えながらも文句をたれてる一人。佐助、俺はお前の味方だぜ?
……力には、なれないけど。
そう佐助に同情の視線を送りつつ、今度肩でも揉んでやろうかな…何て思っていたら、
「完全燃焼ッ!」
「どっこいしょー!」
戦 極 ド ラ イ ブ を
発 動 し や が っ た!
「烈火あぁぁっ!!!」
「あらよっと!」
「ちょっと! サクサクッとやられちゃいなよ!」
あれ? 何だ? 佐助さん。
何でそんなにイライラしてるの? 笑顔が超怖いんですけど! 殺気とか、飛んで無い?
何か八つ当たりに見えるのは俺の気のせいでしょ!? オカンッ!!
普段のにこやか佐助しか知らなかった俺は、ちょっとビックリしてしまった。
(や、分かってたけどね。でも見たらやっぱショックじゃん? 俺には見せない、見たこと無い顔ってさ。幸村だって、あんなに荒々しい顔見せたこと、無いじゃん。
いつも一緒にいたのにさっ!)
そう、俺が普段とのギャップの違いに戸惑いイジケだした目の前で、
幸村の槍が慶次の刀を弾き、慶次が足をもつれさせ尻餅を突いたのが、見えた。
見えてしまった。
「おらぁあっ!」
「やべっ!!」
振り下ろされる槍が、慶次に襲いかかる瞬間、頭が真っ白になって────、
気がついたら……、飛び出していた。
(男はド根性──ッ!)
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