04
「旦那、大将、話し中のとこ失礼しますよ」
障子越しに話かけ、その薄い紙の向こうから此方に耳を傾ける気配がする。
大将の館に来てからというもの、これから開かれる大事に備え、二人は話し合いを欠かさない。(来る前は三郎様が居なくて、大分しょんぼりしてたけど)
「忍隊からの連絡です。前田の風来坊が、こっちに近づいて来てるみたいですねぇ」
──どうします?
(ま、答えなんて、聞かなくても解っているけどねっ!)
「うわ〜、でかい」
町を素通りして、上田よりも立派な門が見えてきた。
主の性質を映したかのようなでっかくて、威厳とかが漂いそうな造り。
(うん、幸村には威厳なんてないよ? あるのは団子臭とかじゃね? この前、口にタレついてたし)
「けいじさん、ここに、あにうえがいるの?」
「ああ、間違いないさ!」
「でも……」
はたして、入れてもらえんのか? 慶次はどうやって訪ねんだ?
慶次なだけに、少々(どころか、大分)不安がよぎる。
すると、慶次は松風からひらりと降りて一人で門まで歩き出した。……高すぎて俺降りれないんですけど。
「大丈夫だって、任しときなってッ!」
ド──ンッ!!
何してんだぁぁァ!!!
いきなり門に向かって、あの超刀を突き立てやがった!
わーい! 超知ってる! あれ、一目惚れって技じゃね? ……って喜んでる場合じゃねぇ!
「開門!」なんて字が門に浮かんだ気がする! 突然の行動にあわあわしている俺を余所に、慶次はやり切った顔をしている。
ちっとは狼狽えろ! 全身真っ赤な兵士さん達が集まって来ちゃっただろッ!
「よーし、じゃあいっちょやるとするか!」
ニカッと爽やかに笑って此方に手を振る慶次。肩に担いだ刀をそのままに、慶次は──
走り出した。
「おいてかれちゃった……」
今、確実にウキウキとした表情で兵士さん達に向かっていきましたよね? 慶次さん。
なんかのスイッチが入っちゃった慶次から「道は俺が切り開くから、お前は行け!」みたいなノリをヒシヒシ感じた俺は、空気の読める三歳児。
でもさ、とりあえずは──、
誰か降ろして下さい!
館の方から上がる煙とか炎は、きっと気のせいじゃない…。
(シュッ)
(あ、かげゆき!bおろして?)
(!……コクコク)
(もうすぐ、会えるよ)
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