そこから見えるもの
瓦礫の山と化した廃墟とそびえ立つ十字架。
今は懐かしき、記憶のかなたにある高層ビルを想わせる巨大な墓標を見上げる。
非常に大きい。これを一体誰が如何にして作りあげたかなど俺には皆目見当もつかないが…弔われし者たちに祈りを捧げることくらいは出来よう。
足を止めている間に先をゆく後ろ姿が遠ざかっていた。
「ここは…随分とさびしい場所だな…」
速度を上げて追い、傍らに並び言葉をかけると鋭い眼差しがちらりと寄こされ再び前を見据える。
己よりも頭一つ分高い背。
金色にかがやく猛禽の瞳。
ツバの広い帽子に飾り付けられている羽飾りが、風に触れてふわふわゆれていた。
「俺のいた所と似た匂いがする」
風化しつつあるが確かに漂うのは血と煙の臭い。
戦場に淀む、ハラワタを抉られるような香りだ。
わずかに眉をひそめながら王国の跡地を踏みしめる俺へ、鷹の目を持つ男――ジュラキュール・ミホークは無言を返した。
嗚呼、俺はまた随分と遠い所へ来てしまったようだな…。
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