03


敵襲ではなかったのかと理解した途端、肩の力が抜ける。

久秀は片手で俺を抑え(掴み)ながら開いた方を差し出し、文を受け取る。
利き手を塞がない所は見習うべきだが、如何せん中途半端な姿勢で捕らえられたままは辛い。主に腰と首の辺りが。

乾いた紙の音がその場に流れる。
文字を全て追い終える頃には、眉間に深い皺が刻まれていた。


「ふん、辛抱のない事だ。…では直ぐに返事をしたためよう。秀長、暫くここで待ちたまえ」
「……分かったから、早く放せよ」
「おやおや、放っておかれるから拗ねているのだね? 安心したまえよ、直ぐに戻る」
「どう見ても違うだろう…」

流石は我が道をいく男。
会話が一歩通行過ぎる…!

冷たい手のひらが同じ温度になる頃、漸く解放され、久秀は茶室から出ていった。
後に残されたのは俺と茶道具一式と、

「……」
「……(なんだか、見憶えがあるような無いような…懐かしいような)」

男の奇行にも一切微動だにしない忍。


――何故、彼を見て懐かしいと感じたのだろう?

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