03
「醜い鳥と、よく語られるが、私にはその鳥は醜いだけには思えないな」
淡々と、語りかける声は先ほど聞いたばかりの声。
「梟も夜鷹も夜を飛ぶモノだ…御同類だろう?」
どうして、と震える喉が音を紡がない。
"卿もそうは思わないかね"
「…安心するといい、卿が"どこへ何を伝えるか"など私には全く興味のない事だが」
意味ありげに薄く微笑みを浮かべた影を、現われたばかりの月がくっきりと浮かび上がらせる。
「信長公には、宜しく伝えておいてくれたまえ」
息を吐く事も躊躇する緊迫したその場に耐えきれず、男は後ずさりしてそのまま――逃げ出した。
後に残るのは、影と月と毒の夜
撚り合わすトワイライト
甘い考えを持つくせに、頼る事を厭い、不安を奥底に宿す愚かなお人よし。
松永久秀が今宵逃がしてしまったのは、そんな夜鷹。
二人は遠い訳では無い。
距離が問題なのではない、むしろ誰よりも近くに居るからこその、
「永遠の相互作用」
――今夜だけは見逃してあげよう
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