これが若さか…



前田と久秀に過去何があったかなど、俺には知る術も無いが…結果的に言うと、アレだ、アレ。

…馴染んだ。



「いやあ悪いねえじいちゃん、こんなご馳走になって」
「子どもが遠慮なんぞするもんではないわい、のう?」
「はあ、まあ」
「んー! うまい!」
「ふぉふぉふぉ、そうじゃろそうじゃろう」
「……(凄い食いっぷりだ)」


衝撃的(?)な自己紹介から早数刻。
仲良く食卓(?)を囲んで夕餉を頂いている。

喜色満面な翁。厨の方々が腕を振るった料理に舌鼓を打つ前田。ちびちびと酒を飲みつつそれを眺める俺。

人数は少ないのに、これ程賑やかな夕餉は初めてだ。いつもは賑やかというより、穏やかだからなあ。


「…(コテン)」
「あ、いや、もうおかわりは…小太郎」
「…?」
「俺は良いからちゃんと食べろ、ほら」
「…(シュパッ)」
「まて、早食いは良くないぞ」


なかなか減らない膳を指摘すると驚異的な速さで平らげてしまった。消化に良くない事をするんじゃない、と言えば素直に頷く。
食後用に出された甘味に視線がいっている気がして、そっと膳に乗せた。…おお、小太郎の周りに花が見える。ぺこりと下げられた頭をぽんぽんと撫でると俺の口元が甘く緩んでいく。

俺の隣で、御櫃を傍らにしゃもじを持って待機している小太郎。前田の存在の所為か最初は抵抗されたが、同じく夕餉を共にしてくれた。

我儘言ってごめんな。でもな、ご飯ってのは皆で食べるのが美味いんだぞ?



「…仲良いんだな、アンタ達」
「ん? …ああ、可愛いだろ」
「へえ…て、かわ…ッ!えええ?!」
「キッ! キキ!」
「うん、夢吉も可愛いぞー」


ぽつりと漏らした前田の一言に、うちの子可愛いだろ? という感じで自慢をする。ああ、夢吉も可愛いな。茶色い毛皮が実に魅力的だ。…小太郎と並べたいなあ。しかしここはグッと堪え、小太郎の頭をグリグリ撫でた。

小動物の可愛さについて語りたい所だが、余り変な事を言って引かれても困る。
いや…そんなに可笑しい事は言ってはいないつもりなんだがなあ。
成る程、これが年齢の差違という奴か?


「翁、どうぞ」
「おお、すまんのう」
「君もほら、」
「え、あ、うん…どうも」


飲める口だろう? と決めてかかって盃を満たす。美味い料理に美味い酒。開け放たれている障子から舞い込んでくる花の花弁。

ふわふわと揺らぐ感覚の合間に、酔いが回っているという意識は無く。前田が話す諸国の話は右から左へと抜けてしまう。(後から思えば勿体無い事をしたもんだ)


――その夜は少しだけ夢を見た気がするんだが、起きたら忘れてしまっていた。寝汗をかいていたからきっと悪夢だ、悪夢。

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