憑かれた


――ザクザクザク、


土を踏みしめる音がリズム良く足裏で擦り合う。
それに合わせた様にガリガリと引き摺る音が後ろから付いて来ていた。


――ザクザク…ザ、


ふぅ、と一息ついて前方に見え始めた灯りに安堵の息を吐き…、背後で止んだ耳障りな音の元凶に向かって見せつける様にゆっくりと、息を吐いた。

「おや、お疲れですか」

此れしきの事で柔ですねえ、と薄っすら笑う疲れの元はぴたりと俺の後ろで止まっていた。…近いな。


さてこれからどうしようか…俺は今、死神に憑かれているらしい。



あれからずっと付いて(憑いて)来る明智光秀は何が面白いのか、頻りと俺に話しかけながら(主に内容は俺と久秀について)ずっと後ろを歩いてる(小太郎がバンバン殺気を飛ばしているというのに気にせず、寧ろ楽しそうなのは何故だ…)

鎌を引き摺りながらついてくるから、地面には二本の線が目印みたいになっているじゃないか…、


「…明智」

「ふふふ、光秀…で結構ですよ」

「いや、遠慮しよう」


光秀と久秀なんて被ってしょうがない。間違えて呼んだら俺が嫌だ…そう言って断ると残念です、と言って別に残念そうでもない顔をする。

いやいや、単純に俺が間違えそうなだけなんだが…、


「いつまで付いて来るつもりだ、」

「…本当に、つれない人ですねぇ。言ったでしょう…お手伝いしましょうか、と」

「…要らない、と言った筈だったが」


そうでしたか? と喰えない表情を浮かべる男に俺の周りはこういう奴らしかいないのか…と、舌打ちしそうになる(勿論、小太郎は別だが)

…とにかく、こんな物騒な男を連れて町へ下りる訳にはいかない。

――連れと勘違いされては堪ったものではないからだ、


「申し出は全く以てありがたくない…帰れ、」

魔王の元へ、そう含みを持たせ寧ろ頼むという気持ちで告げれば…徐に明智が此方へ手を伸ばす。

白い指が闇に浮かび上がる。


―――その手が届くと思われた瞬間、塞がる俺の視界。


一体なにが、と見上げれば…目の前を埋めたのは見慣れた白と黒と赤。
俺を庇うように立ちふさがる小太郎の…伝説の背中。

逞しく見えるその背中に、やっぱり筋肉が凄いなとか今触ったら怒られるだろうか、なんて呑気な考えが浮かんだが自重した。

そんな空気ではないから…というのが何よりの理由ではある。が…、


「――…(ギリッ)」


小太郎が怒っている…、


その手は刀さえ抜き放ってはいないが…、小太郎の抜きの速さは流石は伝説といった処か相手の初動よりも素早く抜くことなど容易だろう。

ピリピリとした空気が、森に漂う。



…是非とも穏便に頼みたい、

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