俺の癒し


(あ…?)


何故だ? ……熱くない。
それどころか一切の音が俺の周りから途絶えてしまっている。

俺は、死んだのか?

ギュッと固く閉じていた瞼を恐々開ける。
…死後の世界だったらどうするか、俺は天国に逝ける自信がはっきり言ってない。

そう考えながら開けた先には───、


「…こたろ」


小太郎のどアップだった。
……何故だ。




「助けてくれたのか?」

「…(コクリ)」


…すまない。頷かなくて良いからな、その頭のが今にも刺さりそうだから。俺に。

いつの間にやら俺は小太郎に抱き上げられていて、とても口には出来ない格好を眼下の久秀達に晒している。…まあ、あれだ。所謂、姫抱きというやつだ。
そんな持ち方されても、オジサン困っちゃうんだけどな。


「助けてくれて、ありがとう」


と言って、自由な右手で頭を撫でれば引き結ばれていた口元が少しだけ緩んだ気がする。癒される。
しかし、何時までもそうやっていたいのも山々だが俺は目下の問題と向き合うために下に降ろしてくれと小太郎に頼んだ。

大分視線が痛いんだ。
突き刺さるんだ。
眼力だけで穴が空きそうなんだよ。


──バサッ


漆黒の翼が視界を埋める。
背に翼を付けた小太郎は文句なしに格好良いな、羨ましい位格好良い第二衣装だ、良く似合っている。そう言えば、ほんのりと頬が色づいた。
……何故だ。



ゆっくりと地面に降ろされる。

地に足がつく感覚に少しだけホッと息を吐く。やはりこの方が落ち着くな。次は、持ち方変えて貰おう。…次があったらな。
そう、一人心に誓いを立てていると──…、


やあ…怪我はないのかね、秀長」
「(ビクッ)…お陰様で、」

突然、真後ろから掛けられた久秀の声に一瞬肩が跳ねる。忘れてはいなかったが忘れたかったな。

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