欲しくて欲しくてたまらなかった
この手を伸ばせば得られたかもしれないモノ
いつか終わる夢ならば共に朽ちてしまえばよかったのか
でもそれはもう、叶わない
ぱちん、ぱちん。爆ぜる火の粉が宙を舞う。
特大のかがり火となって燃え盛る東大寺を睨みつけ、ゆらりと太刀を掲げた。
祈るよう天へと捧げた刃を、力の限り振り下ろす。
パキパキと音を奏でながら氷の粒子が地を這い、白い道を俺と相対する者達の間に、描いた。
一瞬、数秒。
それは決して勢いを殺さず、白い"きょうき"を織り上げていく。
「――な、氷?!」
「Ha! nonsenseだ、そんな事ありはしねえ……だが油断はするなよ、小十郎」
竜の右目が驚きに顔を歪め、独眼竜は馬鹿馬鹿しいと吐き捨てた。左右に避けた二人は気味の悪い者を見る目で、俺を――松永久秀と疑わない男を――射抜く。
こんな薄っぺらい猿芝居に
「は……、は、ははははははははッ!」
これほど可笑しな、人笑わせがあるものか――――!!
堰を切ったように笑い出す。
嘲笑。
どうして腹の底から笑いが込み上げるんだ。
腹の中はぐらぐらと煮えくりかえり、熱くて堪らないのに。
指先はどんどん冷たくなり、震えが止まらない。
俺はその衝動に逆らう事無く。
己の中に溜まった全てを吐き出す様に。乾いた悲鳴を上げ続けた。
――笑わなければ今にも崩れてしまうのではないかと恐れて。歪む口元を持ち上げた。
「気でも狂れたか、松永」
「…ああ、ひどく滑稽に思えてな」
「……!」
右目が油断無く構え、唸る。
ここへ至るまで幾度も刃を交えて来たのだろう。二人には疲れが覗く。守り守られ、補い合って。だが覇気は決して衰えてはいないのか。
その背に守る竜が、右目が、酷くうらやましくて。ジリジリと未だ燃え盛る炎が皮膚を双竜が心を、灼いた。
火はいつか消えても、燃え尽きた木々は戻らない。
割れた鏡も元には戻らない。
残るは砕けた灰のみだ。
痛い、いたい
つらくて堪らない渇いて、かわいて
どうして前が見えないんだ久秀―――パキ、ン
突然、白い道が再び息を吹き返す。氷は澄んだ音を鳴らし氷の蔓草を広げ、背後から独眼竜を貫いた。
「政宗様ッ!」
「――く、ぅッ!」
凄まじいスピードで凍てついた蕾が花開く。花は次々と育ち周囲の兵を抱き込み、傷の癒えていない竜を地へと縫い付けた。咄嗟に刃を突き立てる者もいたがそれも無駄に終わる。呻き声が地を舐め、酸鼻を極める。
「……無駄だ、逃げられはしない。すぐにその花は、」
血の花を咲かせる