※ちょっとだけいかがわしい














ポワルンが揃ってほのおタイプになるような、かんかん照りの真夏日。外では野生のマリルの水遊びに便乗したポケモンたちがはしゃぎまわり、うっかりピカチュウの電気袋にさわって感電しては悲鳴を上げ、また笑い転げるを繰り返していた。
うらやましい。オレだって人目がなければ今すぐパンツ一枚になってマリルたちに混ざりたい。が、あいにく、人間がそれを行動に移すと一歩間違えば変質者になってしまうので難しい。いいなぁ、こんな夏日にはオレもみずタイプのポケモンになりたいなぁ。

「グリー、ン。僕もうだめ、脱ぐ」

「待てレッド早まるな、それならせめて風呂行け」

「どうせシャワー浴びたってすぐ暑くなるよ」

あつい、あつい。
力なく団扇を動かしながら、レッドがのたまう。
うるせーあんまり暑いって言うな。オレは足元にうつぶせに寝転がるレッドの頭を小突いた。
ピカピカ、ルリリ。網戸一枚隔てて外からは楽しげな声が聞こえてくる。

「…まあ、この暑いのに電気工事って、おかしいよな。冷房入れるどころか扇風機すら使えないって、なにそれ死んじゃう」

「右に同じく」

ぱたり。レッドの団扇が仕事を放棄した。もともとこいつは基礎代謝が活発だったこともあるが、雪の霊峰シロガネ山で仙人生活を送るうちに、環境に耐えうる体に変化してしまったらしい。今のレッドにとって、真夏のマサラは天敵だった。
ぽたりと、カーペットに汗が染み込む。
下界は夏日だというのに、このタイミングで下山してしまったレッドは不運としか言いようがなかった。

「なあ、今日はシロガネ山に戻ったらどうだ?せめて明日になれば、冷房も入るし扇風機だって動かせるぜ」

「やだよ。あつくても、ここにいる」

もう汗をぬぐう力もないくせに、レッドはなかなかに強情だ。
生活の拠点を雪山に置いて修行しているせいか、レッドのシャツから伸びる腕は旅に出た頃より白くなったように思う。その肌が暑さで赤みを帯びていて、ちょっとなまめかしいとか思ってしまったオレの頭はだいぶん沸いているようだ。
ああ、これも暑さのせいだ。だからその後に続いた言葉も、幻聴なんじゃないかと疑ったのは仕方ないと思う。

「今日は、グリーンに、会いにきたんだ」

「………」

窓から差し込む日差しが眩しい。遠くで聞こえる水浴びの音に、時々思い出したように工事の機械音が混じる。壁にくっつけた背中を汗が伝って気持ち悪い。ああ、ほんと、夏って感じだなぁ。

「…グリーン?ねえグリ、っん」

気づくとオレは、寝転がるレッドの顎を掴んで、可愛いことを言う口を塞いでいた。
驚いたように開かれるレッドの目。柔らかい唇にゆっくりと舌を這わせると、ぼうっと潤んでやがて閉じる。
蒸し暑い部屋に響くリップ音。
お前が悪いんだからな、なんて、心の中で言い訳をして熱い口内を貪った。
覆い被さるように床に手をつくと、レッドの首筋から汗が流れるのが見える。
相変わらず楽しげに水浴びをするパートナー達は、まだこちらの動向に気づく気配はない。
このままベッドにお持ち帰りしてしまおうか、それとも風呂場に場所を変えようか。
レッドのシャツに手を入れて、ぴくりと震える体を堪能しながら、オレは夏日っていうのも案外悪くないかも、なんて考えて笑うのだった。






















***
首筋を伝う汗のえろさよ…





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