※暴力表現注意 名前を呼んで、肩に触れて、ゆすってみても。 重たい瞼に閉ざされて、綺麗な瞳が現れずにいる。 もったいないなあ、と思う。おれはこのひとの、あの目が好きなのに。 燃えるような赤い、紅い、血みたいな色。 おれはあかいろが好きだから。大好きなひとも同じようにあかいろで染めてみたら、きっと綺麗なんだろうなと思った。 案の定、彼の白い肌にはあかいろがとてもよく似合って。 冷たい刃が食い込んで、白い肌をだんだんとあかいろに染めていく様は神秘的ですらあった。 身体からぬくもりが消えていって、ゆっくりとおれの腕の中に崩れ落ちて。 彼の身体から落ちる血の一滴一滴が、真っ白な雪のなかにあかいろを作っていく。 おれはとても幸せだった。 大好きなあのひとが、おれの名前を呼んで、崩れていったから。 このまま、大好きなひととそのあかいろに囲まれて、ひとつになってしまえばいいと思った。 もう開くことのない瞼に触れて、そのまま頬をなぞる。 くちびるにそっと口づけてみたら、雪みたいに冷たかった。 おれはゆっくりと、彼の身体に食い込んだままのナイフを抜き取る。 そうしてまた溢れたあかいろが、おれを染めていって。 おれは彼の身体を抱きしめて、笑った。 - - - - - - - - - - |