大好きなきみへ。 はじめてきみと出会ったのは、もうどのくらい前のことだろう。 きみは今と比べたらとても小さかったような気がするし、たくましかったような気もする。けれど顔立ちはあどけなさが残っていたから、きっと小さかったのだろうね。 きみは好奇心旺盛で、どんなところにでも進もうとしたね。 体に見合わない大きな木にのぼろうとしたり、崖の途中の花を取りに行ったり、野生のポケモンと遭遇しては目を輝かせて、時には臨戦態勢をとって、ぼくにはそれがとてもきらきらと輝いて見えたよ。 きみと一緒に冒険できて、それまで見てきたものとはまた違った角度から世界をみて、とても、とても楽しかった。 水溜まりに浮かんだ白い雲、橋の上から見渡す河川に山々、洞窟の中を堂々と流れる滝の厳かさ、あたたかく差し込む木漏れ日、笑ったきみの顔…。 そのどれもが、まぶしくて、温かくて、大切な思い出になっているよ。 きみへ。 もうすぐ旅立つきみへ。 きみがこれから歩き出す世界は、どんなところなんだろう。 あたたかいといいな。やさしいといいな。 ねえ、いつかぼくがそこへ行くことがあったらさ。 またきみと、出会える時が来たらさ。 そのときには、きみが見たたくさんのことを、ぼくにも教えてほしいな。 そのときまで、ぼくもたくさん、いろんな景色を見ておくからね。 少しの間お別れだけれど、寂しくないよ。 ぼくには仲間がいる。きみにもね。 どんなに離れていたって、ぼくらはきみの幸せを願っているから。 だからほら、ね。最後は笑ってほしいな。 大好きなレッドへ。 少しのあいだ、おやすみなさい。 また会えたときには、とびきりの笑顔で出迎えてね。 *** トレーナーの最期は、あたたかいといい。 - - - - - - - - - - |