お隣さんで幼馴染みで、ベランダをはさんで向こう側の窓から会話ができる。
遊び疲れて寝るのも一緒、汚れを落とすのに風呂に入れられるのも一緒。
イベントのたびに互いの家にお呼ばれして、ひたすら騒いで一晩泊まって帰っていく。
自分より自分に詳しくて、相手より相手に詳しい。
僕らはそんな関係だった。

ああ、これが女の子だったら、どんなにおいしい設定だっただろう。







僕の幼馴染みは、名前をグリーンという。ちなみに男だ。残念だけど男だ。
顔は整っている方で、腹が立つくらいに女の子にモテる。バレンタインにチョコを大量にもらってきては、よく僕の家にお裾分けに来たものだ。(これが本人に悪気があるわけじゃないから質がわるい。なんの嫌がらせだちくしょう)
僕とて女の子にまったくちやほやされないわけではないけれど、僕の場合は女の子よりも年上のお姉さんによく気に入られていた。僕としては「かわいい」なんて誉められてもまったく嬉しくないし、別に年上のお姉さんが特別好みというわけでもないからなにも考えたことはなかったけれど。


…ああ、話がそれた。つまりなにが言いたかったのかというと、僕とグリーンの関係はそういった腐れ縁というやつで、僕らは互いに親友でありライバルであり、時にはケンカもするよき友だということだ。
つい先ほどまでは、そう思っていた。




「レッド、お付き合いを前提に結婚してくれ!」

…だから開口一番とても良い笑顔でそうのたまったこいつを、思わず殴り飛ばしてしまった僕は何も悪くないと思う。

「なんだ照れてるのか?レッドは可愛いな」

ぞわっ。
思わず背筋が粟立つ。
なんだこいつは、本当にあのグリーンなのか?メタモンか悪戯してるんじゃないだろうか。ああでもメタモンは喋れないんだ。

「グリーン、とりあえず精神科にかかることをおすすめするよ」

ここ最近、ロケット団とかいう黒づくめの集団の相手をしていて、僕も疲れているところだ。今日は早いところポケセンに行って休みたいし、あまり余計なことで体力を浪費したくない。そうだ、頭が沸いてしまった幼馴染みの相手なんかしている場合じゃないのだ。

「言っとくけどな、おれはどこも悪くないぞ。何か患ってるとしたら、そりゃ恋の病だ。レッド、おれはやっと気づいた。生まれた時からずっと一緒だった幼馴染みのお前がおれはどうしようもなく大好きで、旅の間離れているだけで胸が苦しくなっちまう。お前の声を聞けない日には夜も眠れないしお前以外で抜けなくなった。これを恋と呼ばずしてなんと呼ぶんだ!だからレッド、おれのものになってくれ」

愛してる!
最後に叫んでばっと両手を広げる幼馴染み。
草食系男子が台頭している現代ではまれに見る、熱烈な告白だった。
いや、変態宣言だった。
まさかとは思うが、いやきっと聞き間違いだ僕が奴のおかずにされているだなんて!

「目を覚ませ!!」

ばきゃっ。
僕の繰り出した二度目のスカイアッパーはまた見事にグリーンの顎を捕らえた。ナイスファイト。
だっておれの胸に飛び込んでおいで!みたいなポーズをとられたって困るだけなのだ。
僕は、いたって、ノーマルなんだから。

「レッド!照れるのはいいけど愛の鞭が重たい!ツンデレか?ツンデレなんだな?はやくデレ来い!!」

ああもういい加減どっか行ってくれないかなこいつ。
眉間に手をやって盛大にため息をつくと、今まで引き気味にグリーンを見つつログアウトしていたピカチュウがするりと前に出た。
さすがは僕の相棒。

「ピッカピカ、ピカチュ!」

「なんだと、レッドはお前のものじゃねーよ!今告白の最中なんだすっこんでろ!」

「ピカァ!!!」

「やるか?」

ところでこの二人なんで会話できてるんだろう。
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