きっと僕らは恋してる


長い、夢を見た。
妙にリアルで、まるで本当に体験したことがあるような、不思議な夢。
夢には、同じクラスの鉢屋や不破、そして隣のクラスの尾浜と、久々知が出てきた。

夢の中の俺は忍者として生きていた。
忍者を育てる箱庭の中で六年間、鉢屋達と生きていた。
危険なことも多かったけど、本当に、楽しそうだった。

そして、精一杯恋をしていた。
隣のクラスの――久々知兵助に。


六年間で、いろんな久々知に触れた。
俺の知らない、だけど懐かしい表情もたくさん見た。
俺は、死ぬまで彼奴を愛し続けていた。





夢の話を雷蔵にして、確信した。
あれは夢なんかじゃない。本当にあったことだった。
みんな知っていたのだということにも気付いた。

思い返せば、三郎や雷蔵は俺と兵助が極力話さないようにしていたし、勘右衛門も兵助を俺に近付けないようにしていた。
その行動には前から不審に思っていたが、あれはきっと無神経な俺が兵助を傷付けてしまわないようにだ。

その行動はありがたかった。
今までの俺なら確実に兵助を傷付けていただろうから。
……いや、既にもう傷付けているだろう。大切な人が約束を忘れているなんて傷付くに決まってる。

だけどもう、傷付けはしない。



兵助を探して走る。居場所なんて分からない。ただただ、兵助のいそうな場所を虱潰しに走り回った。



『今日は兵助にクレープ奢らせよーっと!』



校内を全て駆け回った時、昼休みに勘右衛門が言っていた言葉を思い出した。
考えるまでもなく走り出す。

もう日も暮れかけているし、兵助は家に帰っているかもしれない。
だけど何故だか、兵助はまだそこにいるような気がした。


クレープが売っているところと言えば、学校の近くにある小さな公園しかない。
そういや、今頃は桜が綺麗だと母親が言っていた。



「――兵助っ!」



日はもう既に沈み、桜のライトアップがなされている。
その桜の中に、兵助はいた。



「……ハ……、チ?」



目を見開く兵助の前に立ち、真っ直ぐ見つめる。
……ああ、何て言えば良いだろう。



「……へいす、!」



考える間もなく抱き締められた。
戸惑う俺に、呟くようにぽつりと兵助は言う。



「……もう思い出さないかと思った」



切ない声に息が詰まる。
好きな奴を泣かせるなんて最低すぎる、俺。



「……ごめん。ごめん、兵助……っ」
「……馬鹿ハチ」



兵助が上を向き、必然的に腕の中で見つめ合う。



「――約束、も思い出したのか?」
「……当たり前だろうが」



不安げに揺れる瞳に苦笑する。それが一番大事だろう。
額を合わせて、約束を口にした。



「兵助。」
「……もし、俺達が生まれ変われたら」
「戦も忍も、何も無い平和な時代に生まれ変わることが出来たら、」
「……そしたら、……もう一度、俺と――」




「恋をしよう」






(何度だって、思い出すから)





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