未来へ

*年齢操作
*年齢が上がったり下がったりします
*モブ生徒





学生時代には考えられなかったこと。
一つ、生意気な子供たちを微笑ましく思えるようになった。
一つ、子供たちに大人になろうとしないで欲しいと思うようになった。
一つ、「丸くなったな」と言われるようになった。
一つ、自分が実技担当の教師になって後輩が教科担当の教師になった。



未来へ



教師にならないか、という話は卒業前に学園長先生直々に聞かされた。
驚いたし嬉しくもあったが、自分には経験も無いからと断った。学園長先生は残念そうに、「まあ気が変わることを待っておるぞ」と悪戯っぽく笑っていた。
それから無事に卒業し、一年はフリーで活動していたがまあ無名では入る仕事もたかが知れていて。

安定しないまま一年が経ち、ある日近くまで来たついでに学園に寄ると、久々知から進路相談を受けた。
久々知も教師の話をされたらしい。同じく経験不足を理由に断ったらしいが、学園長先生は「ならば経験を積んで納得したら帰って来い」と仰られたのだとか。久々知はずっと火薬委員会を務めており、火薬の知識もさることながら学園の情報も持っていたから教師を勧められたのだろうと久々知が言っていた。確かにそれが知られれば久々知は多くの城から狙われる。
自分の相棒として誘ったのは気まぐれだった。
正直久々知が頷くとは思っていなかったし、頷いた後も暫く冗談ではないかと疑っていたくらいだ。
しかし久々知達の卒業に迎えに行けば、久々知は笑ってついてきて。

三年間フリーの忍を務めた後、久々知と共に忍術学園の教師になった。
久々知のことは既に知れていたようで、狙ってくる輩は多かった。こいつのお陰でかなり危険なことも経験した気がする。
三年も苦楽を共にしたことで先輩と後輩なんて意識もなくなり、今ではなんの躊躇いもなく背中を預けられる。
教育実習生として二人で学園に戻ると後輩達は驚いていたが、戻ったことに特に委員会の後輩達は喜んでくれて嬉しかった。

そして、トラブルメーカーと呼ばれていた「一年は組」が卒業して三年後。
俺達は初めて担任を受け持つことになった。

「久々知先生! 潮江先生! おはようございまーす!!」
「おはよう」
「おう、おはよう」

俺達が受け持ったのは一年い組。
自分達もい組だったなあ、と笑い合ったのを覚えている。
俺は最初こそ怖がられたが、今ではふざけて飛びついてくる生徒もおり。久々知にもふざけて飛びついて怒られていた。

「先生方、一緒に食べましょう!」
「食べましょうー!」
「……食べますか」
「……食べるか」
「「やったー!」」

い組の生徒は俺達の学年のように破天荒な者が多く揃い、今年の一年生は久々知達の学年のようにどのクラスとも仲が良かった。
この先の成長が楽しみだな、と先生方に言われている。

「先生っ、美味しいですね!」
「そうだな」
「先生方と食べるからもっと美味しいです!」
「うん。私も美味しいよ」

俺達が教師になったことを聞きつけたように俺や久々知の同級生も時々やってくる。
茶化されることがほとんどだが、忍として最前線を駆けているあいつらの姿を見るといつもほっとする。
俺が卒業してからもう随分と経ち、良い報せもあれば悪い報せもある。結婚した者も、子供が出来た者も、一線を退いた者も、死んだ者も。

「あ、お前達今日テストするから」
「「えー!?」」
「聞いてませんよ!?」
「今言ったぞ。忍たる者、どんな状況でも冷静に対処出来ねばな」
「ふむ。実技もやるか」
「「えええ!!」」
「なに、普段やってることと変わらんさ」
「そうそう、復習だと思って頑張れ」
「復習って……!」
「みんな、早く飯食って勉強するぞ!」
「「おお!」」

俺達がそうだったように、この先の未来どんなことがあるか分からない。
今は大勢いるこの子達も、途中で辞める子がいるだろうし最悪の未来だって考えられる。

「兵助は意地が悪いな」
「文次郎さんほどでは無いつもりですよ」
「……いやいや、無い無い」
「そんな否定せんでも」
「するだろう、そりゃあ」

未来なんて分からない。
特にこんな時代では、それも仕方ない。
だけど、この先のずっとずっと未来。
いつか平和になった世界で、きっとまた会えるだろうと。

「さて、今日も頑張るか、久々知先生」
「そうですね、頑張りましょう、潮江先生」

あまり悲観することなく、今を生きよう。

笑い合って、こつんと拳を合わせた。









――
なんだろう、このコレジャナイ感。まあいいや。
小さい頃に思い描いていた未来と、現在を比較すると落ち込みますよね。こんなつもりじゃなかったのにって。ずっと一つの夢を追いかけてそれを実現させた人は凄いけれど、みんながみんなそんな風にはなれないし。なんらかの挫折を経験して、諦めて、妥協して、なんか違うなって思いながら過ごしている。なんかしなくちゃって思ってても、足掻こうともせず頑張ろうともせず、結局思うだけにとどまって、どうしようもなくて。
でも、生きるしか無いんですよね。
なら悲観せずに生きる方が楽しいに決まってる。
的な感じの話にしたかった。ははは。

兵助が教師になる話、文次郎が教師になる話は読んだことがあるので、二人でなっちゃえばよくね?というノリで教師になりました。割とありだと思う。

では、ここまで読んで頂きありがとうございました。

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