それが君達

*56巻その後、盛大にネタバレ
*自己解釈含









結局、今回の顛末は先生方の共謀だったというわけで。

「なんだよ……」

兵助は安心したようにその場に座り込んだ。良かった良かったとその肩を叩く五年生を、六年生は微笑ましそうに見守る。

「だが俺としても良かったよ。火薬と一緒にされては常に気が抜けんからな」
「久々知は隠密がうまいからなぁ」

ほっとしたように息を吐いた文次郎に、仙蔵がからかうように言った。
今回のように、自分や三木ヱ門が火薬免許試験を受けた時も実技試験は久々知が裏で動いていた。利梵と一年は組・ろ組のチーム達を補助していたのも久々知だ。
先生方は勿論気付いていたが、六年生はタカ丸を見るまで気づかなかった。
火薬と会計が統合されれば、会計委員も気付かぬうちに帳簿をちょろまかされるだろう。

「「久々知先輩!」」
「兵助くーん!」
「……どうした?」

そんな会話をしていると、火薬委員が兵助を呼びに来た。それぞれが首を傾げる兵助の腕を引っ張る。

「試験が終わったよ!」
「土井先生のところに行きましょう!」
「今回の件について色々聞かなければ!」
「おう、そうだな。では先輩方、今回はご協力ありがとうございました。失礼します」

そうして六年生に一礼し慌ただしく去って行く火薬委員会を見送り、五年生と六年生は笑い合った。




「「土井先生!」」

筆記試験を終え、のんびりと茶を啜る土井の部屋へ火薬委員会が雪崩れ込んできた。と言ってもきちんと入室する時には一礼する辺りが彼ららしい。

「お前達、今回はお疲れ様。特に兵助はよくやってくれた」
「あ、ありがとうございます……じゃなくて!」
「先生、今回の件はどこから分かっていらしたのですか?」

褒め言葉に一瞬照れる兵助に代わり、三郎次がずいっと前に出てきて尋ねる。

「先生が委員会顧問会議に出席出来ていなかったのは本当ですし、私が試験のことを伝えた時の反応は演技では無かった筈。いつ安藤先生と相談を?」

すっと冷静になった兵助の言葉に、黙ったままのタカ丸と伊助も真剣な目を向けた。
そんな四人を見て、土井は苦笑を零す。

「そうだな、兵助の言う通りそこは演技では無いよ。今日試験が行われることは知らなかった。でも試験の話は前々からしていたんだ」

知らなかったのは『今日』試験が行われるということと、『下級生のみ』というところだけ。
そう言った土井に、火薬委員会の面々は思いっきり溜息をついて脱力した。

「だが三郎次も潜入したのは流石だったし、タカ丸も兵助の補佐を務めてたし。伊助もは組とろ組でよく頑張ったじゃないか」

偉いぞとそれぞれの頭を撫でて微笑む顧問に対して、四人は目を合わせて頷く。
そうして一斉に抱きついた。

「ほんとに安藤先生が顧問になるかと思いましたぁ!」
「会計と統合なんて考えられませんよ!」
「ああもう、ほんとに良かったぁ!」
「やっぱり火薬委員会はこの五人でないと!」

心底安堵したように笑う四人に、土井は少しだけ罪悪感を感じる。せめてこの子達には教えていても良かったかも、と。
だがもう終わったことは仕方がない。土井は四人を一度ぎゅうと抱きしめると、嬉しそうに微笑んだ。

「じゃあ、今回の件も解決したことだしみんなで団子でも食べに行こうか」
「「やったあ!」」
「嘘でしたけど、土井先生の復帰もお祝いしましょう!」
「そうだな。じゃあみんな準備して正門集合!」
「「はーい!」」

兵助の号令に元気よく手を挙げて、三人は勢い良く部屋を出て行った。
その姿を見送ると、兵助は隣に立つ土井を見上げる。

「土井先生」
「ん?」
「おかえりなさい」

嬉しそうに目を細めた兵助に、土井は優しい微笑みを深めた。

「ただいま」


穏やかな空気をまとい、楽しそうに町へ行く五人を眺めて。
安堵したように、教師達も笑った。

やっぱり火薬委員会はああでなければ。











――
勢いで書いちゃったぜ。
56巻で、土井先生の最初の会話はどこが演技だったんだろうと思いまして。
考えた結果こうなりました。
ちなみに試験中タカ丸は制服の回収とかしてた。

やっぱり火薬委員会は顧問も含めて仲良し委員会だよね!
火薬委員会大好きです。
次巻も楽しみ楽しみ。

では、ここまで読んで頂きありがとうございました。

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