穏やかな一日






小平太が五年長屋の前を通った時、木下が縁側に座ってお茶を飲んでいた。
先生がこんなところにいるのは珍しいなあと思っていたが、木下の目の前に集う猫達を見て納得した。
木下は生物委員会の顧問で、ああ見えて動物が大好きだ。
あの猫達も先生に懐いているのだろう、先生の目の前には猫の餌が置いてあった。
なんかいいもん見た! と思った小平太は、そのまま体育委員会の後輩の元へ走っていった。








留三郎が後輩を引き連れて五年長屋の前を通ると、縁側に並んで木下と談笑する兵助の姿を見かけた。
二人の距離は担任と生徒というには些か近く、どちらかというと親子のようで見ていて微笑ましい。
鬼と呼ばれる強面が柔らかく微笑み、鉄仮面と言われる無表情も今は見る影なく無邪気に笑っている。
和むなあ、と思いながら、留三郎は次の修補場所へ向かって行った。








仙蔵が五年長屋の近くを歩いていた時、並んで談笑する木下と兵助、兵助と背中合わせに座る三郎を見た。
木下と兵助の会話に時々茶々を入れながら、二人の間にある団子をつまんでいる。
二人はそんな三郎に時々文句を言いながらものんびりと茶を啜っていた。
その光景を見ているとなんだか、からかう気も削がれていく。
仙蔵は珍しく柔らかい笑みを浮かべると、のんびりと踵を返した。







伊作が落とし穴から脱出して医務室へ向かう途中、五年長屋の前を通ると並んで座る木下と兵助に、兵助に凭れかかる三郎、兵助と反対側に座る八左ヱ門を見た。
八左ヱ門と木下の毒虫談義を関心しながら聞いているのは兵助で、三郎は兵助の後ろでつまらなそうに欠伸をしている。
熱心に聞きながらたまに質問をする兵助に八左ヱ門と木下は嬉しそうに解説をしていて、なんだか微笑ましい。
成績ツートップの対象的な反応に笑いながら、伊作は医務室へ歩いて行った。







文次郎が鍛錬に行く途中五年長屋の側を通ると、並んで座る木下、兵助、八左ヱ門に兵助と背中合わせに座る三郎、木下に後ろから抱きついている勘右衛門を見かけた。
ろ組が二人いるにも関わらず、い組の三人は次回の実習について話している。
とはいえ、三郎は兵助に凭れかかって眠っているようで、八左ヱ門も眠そうに欠伸をしているから聞いていないのだろう。
なんか気の抜ける光景だなあ、と文次郎はがしがしと頭をかきながらそっとその場を後にした。







長次が雷蔵に委員会の話をするため五年長屋へ行くと、職員室前の廊下で眠りこけている六人を見つけた。
腕を組んで眠る木下の肩に頭を預けている兵助、その兵助の背に凭れかかる三郎、木下に抱きついて眠る勘右衛門と、木下の腿を枕にする八左ヱ門。
その八左ヱ門の腹を枕にして、すやすやと寝息を立てているのは雷蔵だ。
長次は少しだけ逡巡して、どこかの部屋から掛け布団をいくつか持ってきてそれぞれにかけた。








――
木下先生入れて仲良し学年なんだぜ。というのと自然に集まる五年生。が書きたかった。
漫画にしたらもっと和むんだろうけど、んー、和めたかしら。
最近長めのシリアス多いのでたまにはこんな日常もありでしょう。

ではでは、ここまで読んで頂きありがとうございました。

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