orange

*現パロ/転生




ずっと、ずっと探してる。
なのに、なあ。
お前達は今どこにいるんだよ?








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同じ高校の先輩は六人、後輩は四人。
みんなあの時の記憶があって、今もとても仲が良い。
並立の中学校の後輩達もあの頃の記憶のまま、全員揃っていた。
「仲が良い学年って定評があったからすぐ見つかると思ってました」って、そう言った後輩の言葉が痛い。だって俺だってそう思ってたんだ。

高校に進学して二年。未だに俺は、あいつらの誰一人とも再会出来ていない。


町中は全部探した。でもいなかった。
近隣の町も探した。小遣いはあまりある方じゃなかったし時間もそこまであるわけではなかったから満足出来るまで探すことは出来なかったけど、でも、探した。



毎日、町が橙色に染まる度に思い出す。
教室で内緒話をしている同じ顔の二人や、ふと遠くの空を見上げた特徴的な髪、二人で町へ行った帰りに見た笑顔のぼさぼさ髪。
出会ったばかりの頃や一番楽しかった藍色の年。
どれもこれも、あいつらのことばかり。

これだけ会えないと、誰かに仕組まれているのではないかとすら思えてしまう。
神様の気まぐれというのなら神様を殴ってやりたい。
そう思ってしまう程、俺はあいつらが必要らしい。


なあ、今どこにいる?








四人は今日も町中を走り回っている。
三郎と雷蔵、勘右衛門、八左ヱ門とバラバラに手分けして。
探すのは只一人、記憶の中にある綺麗な黒髪の親友だけ。

探し始めたのは高校に入って、四人が再会してからだった。再会と同時に記憶を戻し、そして其処に一人足りない寂しさを感じたのだ。
以来、時間が出来れば必ず町中駆けずり回っている。

未だに、彼は見つからない。


探し始めて二年目の秋。彼らは確実に焦っていた。
彼らだって、すぐ見つかると思っていたのだ。

三郎の情報を雷蔵が分析して、協力して探す二人。
ただ我武者羅に走る勘右衛門。
怪しいくらいに辺りを見渡す八左ヱ門。


八左ヱ門は彼の面影と重ねては、黒髪の女性に声をかける。いつも三郎にナンパかと怒られるのだが、“今”の彼を知らないのだからあの頃と重ねるのは仕方ない。



「あ、すみません人違いで……」
「いえいえ」



そうして今日も間違える。

あの頃の笑顔はすぐに思い浮かぶのに、彼はこの場所にはいない。
生きていない可能性だってあるのに、何故かそれはないと断言出来た。



「今日の成果は?」
「無し」
「あー……今日も駄目かぁ」
「……気長にやるしかないさ」



橙色に染まる町で四人、がっくりと肩を落とす。
――……その時だ。



「おい!」



懐かしい声に、四人は顔を勢いよく上げた。








兵助は目を見開いて携帯を見た。
突然の朗報を飲み込めないでいる。こんなにあっさりで良いのだろうか。

……嗚呼、だけど。
やっと会える。


携帯を落として兵助は走り出す。
3通のメールはどれも彼の後輩から。



『鉢屋先輩と不破先輩いました! 伊助』
『尾浜先輩見つけました! 三郎次』
『竹谷君発見! タカ丸』



……どれも嬉しい情報ばかり。

あれだけ探してたのに一度に全員見つかるなんてな、とくすりと笑う。
出会えなかったことや仕組まれたように全員見つかったことが神様の気まぐれでも、今はそれを咎めようとは思わなかった。

兎に角、会いたい。








「「兵助!!」」



髪が短くなって学生服を着ている。
それ以外は何も、声や顔立ちまであの頃と変わってなくて。
あの頃と重なる“今”の四人の笑顔に、兵助は泣きそうな顔で笑った。



「……やっと、会えた」



そんな泣きそうな笑顔が、声が、今度は四人の記憶と重なって。
今までたった一人で自分達を探してくれていたことを思うと、申し訳なくて。勘右衛門と雷蔵は涙を流し、八左ヱ門と三郎も少しだけいつもと違う笑みを浮かべた。



「兵助っ!」
「わ、」



耐えきれなくなったのは勘右衛門で、真っ先に兵助に飛びつく。驚いた表情を浮かべつつも、兵助はしっかり受け止める。
勘右衛門に続くように八左ヱ門、雷蔵、三郎も兵助を取り囲んで、抱き付いた。

そこにあるのは紛れもなく、心の底からの笑顔。
この時代に生まれて17年目、漸く五人は笑いあえたのだ。


室町時代、忍術学園 一から六年。
平成時代、大川学園 これにて全員、揃い踏み。








orange
(好きだってひとつの気持ちは変わらないんだ)













――
1話書くのに文字数も時間もかかりすぎる。

ボカロの「orange」って曲がテーマなんですが、このストーリーで動画作りたいと思ってます。まあマイPCもペンタブも無いしいつになるのか分かりませんが笑

兵助が一人っていう状況萌えませんか。すみません。
私はどうも兵助を可哀想な立場にしたいようです。

ここまで読んでくださりありがとうございました。




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