再会の言葉を

*転生、現パロ




或る夏、小さな温泉街で起きた、奇跡のものがたり。



「次屋に伊賀崎!?」

始まりは、日が沈んだ夜のコンビニ前。
アイスを買いにきた尾浜が見つけた二人。
尾浜の声に振り返ると、二人は大して驚いた様子もなく小さく「……あ、尾浜先輩」と呟いただけだった。

「なんだよ反応うっすいなー! な、それよりさ、お前達がここにいるってことは、おれの仲間、誰か見てない? なっかなか見つかんなくて」

へらりと笑って見せる尾浜だが、その目は真剣で。
きっと、誰にも出会えていないのだろう。
もしかしたら、学園の仲間に再会するは二人が初めてだったのかもしれない。
そんな彼に、若干呆れを滲ませて返すのは伊賀崎だった。

「……兵助さんはうちの隣の旅館に住んでますし、不破先輩は坂の麓の饅頭屋で働いてます」
「麓って……は!? うちの近所じゃん!」
「兵助さんは尾浜先輩のこと見たことあるそうですよ、でも記憶があるのかわからなくて、怖くて声はかけられなかったそうです」

尾浜の言葉を聞いていないように続ける次屋は無表情で、どこか怒っているようだ。
兵助さんと呼んでいるし、今生では仲が良いのかもしれない、と思う。
それにしても、怖くて声をかけられなかったなんて、兵助は変わっていないなあ、と思う。
同時に、気付けなかった自分に腹が立った。

「……兵助さんは、今、心が病んでしまっています」

はっと顔を上げると、伊賀崎が悲痛な面持ちで尾浜を見つめていた。

「家族以外には、僕と三之助としか会おうとしないんです。このままでは、兵助さんが壊れてしまいます。だから尾浜先輩、」

兵助さんを助けて。





翌日、街の外れの崖の上に立つ温泉宿に、荷物を運び込む竹谷の姿があった。

「八左ヱ門、早くしろ」

竹谷に発破をかけるのは鉢屋。
今生でこの二人は、幼馴染みとして生まれ変わっていた。

「へーへー、分かってますよっ、と!」

鉢屋の言葉に適当な返事をしながら、竹谷は配達の品を宿の中へ運ぶ。
竹谷家で作る野菜は、この街では一番美味いと評判だ。

「毎度どーもご贔屓に!!」

野菜の重さでヤケになりつつ叫ぶ竹谷の言葉に一拍置いて、宿を訪ねてきた人の声がした。

「すいませーん、饅頭屋磊々でーす」

その声はあまりにも聞き覚えのある声で。
思わず軽口の応酬をしていた二人は顔を見合わせる。

「……あれ、もしかして、」
「「雷蔵!!」」
「やっぱり! 三郎! 八左ヱ門!!」

饅頭の箱を抱えながら嬉しそうに顔を綻ばせるのは、まさしく鉢屋、竹谷と同じ組だった不破雷蔵であった。

「会えないと思ってたらこんなとこにいたなんてねー! 道理で街中で見つからないわけだよ!」
「兵助と勘右は街中にいるのか?」
「んー、勘右衛門は一度見かけたことあるけど、記憶がなさそうだったかな…」

期待をこめた目できらきらと見つめてくる二人に、不破は申し訳なさそうに微笑んだ。
尾浜に記憶がなさそうだということにも、暗に久々知は見かけたことすらない、と語っていることにも、二人は見るからに落胆した。

「でも、四人ここにいるってことは、兵助もきっとこの街にいるはずだ!」

竹谷が快活な笑みを浮かべて高らかにそう言い切った。
彼のその太陽のような笑みに、同じ組だった二人は何度救われたかしれない。

「そうだね、諦めずに探そう」

不破の顔にも朗らかな笑みが戻り、つられるように鉢屋も微笑んだ。

『決めた。今度再会した時には、互いに、なにか言葉を掛けよう』

頭の中を、尾浜の声が掠めた。

『んじゃあ、雷蔵はおれに、おれは八左、八左は兵助、兵助は三郎、

んで、三郎が雷蔵な』

『あはは、なんにしようか』

自分が雷蔵に掛ける言葉は、なんだったろうか。

「……三郎?」

急に黙り込んでしまった鉢屋に、不破と竹谷は顔を見合わせる。

『決まってるじゃないか。私は、』

するすると解ける紐のように、記憶が蘇ってくる。
きっと、これは、言うべき相手と再会することができたら思い出す記憶なのだろう。
記憶の声と重ねるように、鉢屋は不破を真っ直ぐ見据えて口を開いた。

「『不破雷蔵あるところ、鉢屋三郎ありさ』」

途端にぽろぽろと零れ落ちる涙を不破は拭うこともせずに、日溜まりのような暖かい笑顔を浮かべてゆっくりと頷いた。











――
という夢を見ました。珍しく五ろメインっぽいなーと思いつつ、勢いに任せて書いちゃった。笑
なんか五いが不憫…というか可哀想な役に。
勘ちゃんが気づかないわけないだろー!と思った方すみません、こういう夢だったんですすみません。
ちなみに書けなかったのですが、勘ちゃんは指圧の店の息子という設定でした。笑

落乱の夢を見ることはあっても、支部を見たり笑顔動画見てる、割と記憶整理のような夢だったので物語調の夢を見れて嬉しかったです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!




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