明けまして



「あけおめー!」
「ことよろ」
「お前達新年くらいちゃんと挨拶せんか!」
「「はーい」」

親子のようない組のやり取りに笑いつつ、ろ組もそれぞれおめでとうと頭を下げる。
年が明け、生徒達も少しずつ学園に戻ってきはじめた。新学期まではまだあるが、鍛練や委員会の仕事で早めに戻ってくる生徒は多いのだ。
五年生も例に漏れず、大晦日と三が日だけを家で過ごし、それぞれがすぐに学園へ帰ってきていた。

「おっ、ろ組だ。あけお……明けましておめでとうございます!」
「今年もよろしくお願いします」
「木下先生が睨んでいる」
「お前ら新年からバカだなー」
「明けましておめでとう。今年もよろしくね」
「雷蔵やさしい」
「おれら雷蔵とだけよろしくする」
「アホか」

たった数日離れた程度では、久しぶりも何もない。そっ…と雷蔵に寄り添った二人に、三郎が容赦なく頭を叩いた。小気味良い音に八左ヱ門がケラケラと笑う。

「景気良い音だな」
「中身カラなんじゃないのか」
「新年そうそう酷い言い種だな……」
「三郎の初毒舌いただきましたー!」
「うわー! めでたくないね!」
「雷蔵さん!?」
「雷蔵の初切り捨て!」
「なにそれ!」

きゃっきゃと笑いながらぽんぽんと会話が弾む。すれ違う六年生や教師達と挨拶を交わしつつ、またかと若干呆れ混じりの視線もいただいた。
トラブルメイカーではないが、五人揃うと騒がしい。四年生以下がほとんど残らない長期休暇は、五年生が風物詩のようなものだ。彼らの声を聞くと、新学期前特有の学園の空気を感じる。学園に帰ってきた、また騒がしくなるぞ、と気合いが入るのだ。

「「明けましておめでとうございまーす!」」
「おーお前達元気だな。おめでとうございます」
「おめでとうございます。お前達、暇なら餅つき手伝ったらどうだ?」
「餅! やります!」
「きな粉作ります!」
「食堂ですか?」
「いや、正門前でやるらしいぞ」
「よし、じゃあ行くぞ!」
「失礼しましたー!」

「帰って早々騒がしいなあ」
「五年生らしいですよね」

台風のように来て去っていく五年生に、山田と土井は顔を見合わせて笑った。
兵助のきな粉餅は美味しいだろうなあ、と顧問は多少親バカな思考も巡らせつつ。

「餅つきは先輩方がやるんでしょ?」
「七松先輩と中在家先輩の高速餅つきね」
「あれほんとすげーよな。去年勘右衛門と真似しようとしたら思いっきり手打ったもん」
「怖」
「ただ早くすれば良いってわけじゃないんだよねえ」
「しばらく左手腫れて使いもんにならんかった」
「こわ!」
「勘右衛門にやらせるなよ……分かってたことだろ……」
「言うて誰がやっても全力でつくだろ」
「「……」」
「「確かに」」

正門前には既に食堂のおばちゃんと六年生、既に帰ってきている下級生が数人。
きな粉やあんこ、醤油に海苔、思い付く限りのトッピングを持っていけば、下級生からわあと声が上がる。六年生はしたり顔だ。どうやら読んでいたらしい。

「あんころ餅からきな粉餅、磯辺焼きにおろし、うどんもありますよ!」
「抜かりないな」
「まあいい、頼むぞ。たくさん作るからな」
「お任せあれ!」

ニヤリと笑われニヤリと返す。
新年初めての上級二学年の共同作業は、学園みんなの餅作り。なんとも平和な光景だ。

明けましておめでとうございます。





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読んでいただきありがとうございました。



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