久々知が死んだ話
久々知兵助が死んだ。
五年総出の実習で仲間を庇って、刀で一突きされたらしい。
どこからか情報が漏れていたのか、這々の体で戻ってきた五年生も全員怪我を負っていた。
伊作の話では見るに堪えない者ばかりだったようで、足や腕を失った者もいたという。
それでも命まで奪われたのは久々知だけだった。
それはきっと、総指揮を務めていた久々知の執念に違いないと思っている。
同級には勿論、後輩にも慕われていた奴だった。
先生にも、私を含めた同輩達にも信頼されていた。
だからこそその傷は大きく、学園全体が暗い雰囲気に包まれている。
……私も、彼らと共に悲しみを共有したかったのだが。
『うわあ、七松先輩の春画えげつな! 想像通りっちゃ通りだけど!』
どうしてこうなった。
――
何故か久々知限定で幽霊が視える長次と、幽霊になっちゃった久々知。
基本はコメディで、ちょくちょくシリアスで、みたいな感じで書きたかった。
短編で書こうと思ったのだけども書いてるうちに書きたいテーマのようなものが見えてきて、これ長編の方がよくね?ってなった。
けどそうなった瞬間筆が止まったよね。
というわけで冒頭のみ。