仙くくの最期の日
視界の端に揺れる黒髪を捉えて反射的に名前を呼ぶ。
振り返った奴は、私を見てふわりと顔を綻ばせた。
「どうかしましたか?」
「いや、これから委員会か?」
「はい。立花先輩もですか?」
「ああ」
軽く頷いたものの、久々知が身にまとう空気は常よりも凛としており、ただの委員会で無いことは理解できた。
自分の委員会も大概精神力が必要とされるが、火薬委員会もなかなかのものだ。
柄にもなく久々知の頭にぽんと手を置く。
「なんだその顔は」
久々知はすこぶる嫌そうな顔を私に向けた。
後輩で恋仲のくせに、こういう行動は嫌がるのだ。
「……別に」
「拗ねるな。恋人を心配して何が悪い」
「……拗ねてません、悔しいだけです」
何が悔しいのか尋ねる前に、久々知はにこりと笑って踵を返す。
話は終わり、と言う態度に苦笑を零して、その背を呼び止めた。
「帰ってきたら団子でも食いに行こう。私の奢りだ」
久々知は可愛らしく笑って、頷いた。
それが、私達の最期の会話になった。
――
なんとなくそういう話を書きたくなったのだけど、書いてて落ち込んだのでやめた。