浜くんと委員長会議

*グダグダ長い






忍術学園には委員長会議なるものが存在するらしい。
各委員会の委員長(代理)が集まり、近況報告とか予算の話をするのだそうだ。
「代理で他の学年が出るときもあるし、一回くらい補佐として出席しといた方がいいな」と食満先輩が仰っていたのだが、まだまだ先の話だと思っていた。

まさかこんなに早くその機会が来るとは。

「ンな緊張することじゃねえって、会議ったって大抵茶ァ飲んで後輩自慢して終わるし」
「は、はい」

食満先輩に苦笑されて肩を叩かれるけど、俺はまだ他の先輩の顔をろくろく覚えていないのだ。
まあ、最近会わないものの久々知先輩はいろいろとよくしてもらったから覚えてるけど。
……いや、正確に言うと名前は分かるけど顔と一致しないとか、顔は分かるけど名前が分からないとかが多い。
ともかく俺の学園知識はそんな感じなので、緊張するのは仕方が無い。補佐という役割上、下手に他の先輩に喧嘩売るようなことはしたくないし。
そんなことをぐるぐる考えていると、用具倉庫の扉が叩かれた。

「竹谷です。会議の準備が出来たんで、集まってください」
「おー、いつも悪いな」
「いえいえ。では」

音もなくやってきた竹谷先輩は、食満先輩の言葉に朗らかに笑ってすぐに去っていった。
そういえば五年生が委員長の委員会はいろいろと大変なんだって誰かが言ってたような。

「お前も来年委員長代理になるんだし、八左ヱ門と久々知の仕事っぷりは見といて損はないぞ。委員長代理は会議室のセッティングをして、六年を呼びに来る。ここまでが仕事だ」
「へえ……大変そうですね」
「ま、来年はあいつらだからそう気負うこたァないだろうけど。さて、行くか」
「あ、はい」

苦笑する食満先輩について立ち上がる。
久々知先輩は確かに優しかったな、と思い出す。そういえば竹谷先輩も一度関わってたっけ。……孫兵? がジュンコちゃん? を逃がした記憶がある。あの先輩も優しい先輩だったな。

「よお、なんだ、まだお前だけか」
「あれ、先輩早いですね」
「こ、こんにちは」
「こんにちは。久しぶりだね、守一郎」

会議室にはまだ久々知先輩しかいなくて、挨拶をしながらテキパキとお茶を淹れてくれた上に、お茶請けに高そうなお菓子を出してくれた。
いつもこんなのを食べてるんだろうか。委員長ってすごい。

「お久しぶりです。最近は全く会いませんね」
「委員会も学年も違うからねえ」
「また火薬のこととかいろいろ教えてくださいよ」
「火薬のこともいいけど、他の勉強は大丈夫なのか? タカ丸さんよりはできてるだろうけど」
「やー、どっこいどっこいっすよ。毎日のように三木ヱ門とかに教えてもらってます」
「あはは! あいつらはなんだかんだ優秀だからな、いろいろ教えてもらうといいよ」
「はい!」

穏やかに笑う久々知先輩は、久しぶりに会ったけどなんだか話しやすい。
優しいオーラが出てるからなのか、一度一緒に闘ったからなのか(実際に戦ったのはタカ丸さんだけど)。
これならなんとか乗り越えられそうだ。そう思うと、いつの間にか緊張が解けていたことに気づいた。久々知先輩すごい。

「そうか、守一郎は最初火薬と仲が良かったもんね」
「そういえばそうだったな。また久々知が後輩を誑かしたのかと思ったぞ」
「うわっ!?」
「……人聞きの悪いこと言わないでくれます?」
「嘘ではねーだろ」
「まるっきり嘘でしょうが」

久々知先輩と談笑していると、上から六年の先輩が二人下りてきた。髪の綺麗な先輩と、確かい、いさ……いさ……伊作先輩だ。思い出した。
それにしても気配が無かった。さすが六年生。
でも久々知先輩と食満先輩は気づいてたのかすごくあっさりしてる。
なんで気づいたんだろう。気づくもんなのかな。

「他の先輩方は?」
「そろそろ来るんじゃないか? 八左ヱ門が呼びに来るとついつい話が長くなるからな」
「からかってるだけでしょう……。あいつ、会議終わった後毎回疲れてるんですから程々にしてやってくださいよ」
「後輩甲斐があるからねえ八左ヱ門は。ついつい構っちゃうんだよ」
「先輩方の場合、構い方に問題がありますからね……?」
「……否定はできないね」
「……七松先輩あたりにいけどんマラソン確約させられてなきゃいいけど」
「無理だろうなァ」

先輩方の会話はよく分からないけど、話の内容的に竹谷先輩の話のようだ。
後輩甲斐ってなんだろう、素直とかそういうこと? 後輩いたことないからよく分からない。
でも、竹谷先輩は随分先輩方に好かれているんだということは分かった。久々知先輩も別に仲が悪いってわけではないんだろうけど。

「……小平太は?」
「うお!」
「……すまない」
「あ、いえ、こちらこそ……!」

突然後ろの木戸が開いて入ってきた先輩に驚いてしまった。その上謝られてしまった……! 怖そうな先輩だけど、そうでもないのかな。でもなんだか申し訳ない。

「ああ長次。小平太はまだ来ていないが……いや、恐らく文次郎が連れてくるだろう」
「そうか」
「八左ヱ門、完全に巻き込まれましたね……」
「だろうな……全く、会議だっつってんのに」

怖い先輩の前にもお茶とお茶請けをさっと置いた久々知先輩は、苦笑しつつも自分の席にあった書類の束を分け始めた。どうやら会議で使う物のようだ。

「そういえば守一郎、六年生とか俺らの学年とか、名前覚えた?」
「へぇっ!?」
「面白い声出たなー」

突然振られた話題に思わず声が裏返ると、久々知先輩はケラケラと笑った。

「いきなりなんなんですかぁ……」
「いや、ふと思って。キャラが濃いとはいえ一回二回じゃあ覚えらんないだろ、みんな名前長いし、変わってるのも多いし。だから覚えられたのかなーと」
「あー……確かに、久々知先輩も読めないっすもんね」
「うん、食満先輩も一回じゃ読んでもらえないですよね」
「だなー。しょくまんとかって言われる」
「あー、僕もひびちとかひさびさちとかって言われます」
「なるほど、そう読めなくもないですね」
「そうそう。だからもう会うこともないだろうなって人にはひびちで通すこととかあるよ」
「あるある。訂正すんのが面倒なんだよな。どうせ忘れられるし」

そうなんですよーと笑った久々知先輩は他の先輩にも顔を向けた。

「立花先輩は覚えやすそうですよねー。普通に読めるし」
「そうか? まあ、立花は耳に馴染みがあるからかもな」
「橘の花とか? 確かに、聞いたことある言葉は覚えやすいかも」
「善法寺先輩とか中在家先輩は、なんか読めなそうで読める感じですね」
「ああ、そういえば最初読めているのか自信がなかった」
「三文字ってのも一瞬うっとなるよな。漢字もごちゃっとしてるし」
「確かにねえ。でも読み方云々よりもさ、寺ってついてるから寺の子だと思われて、お祓いとか頼まれることがよくあるんだよね」
「先輩こそお祓いしてもらった方がよさそうなのに……」
「久々知、それはどういうことかな?」
「不運だからだろ」
「不運だからだな」
「不運だからだ……」
「長次まで!」

息ピッタリな六年生に久々知先輩も笑う。
仲良しだ。

「七松先輩と潮江先輩はぱっと読めますよね」
「読めるけど、簡単すぎて逆に合ってるのか心配になったなー」
「ああ、潮江はともかく七松はしちまつか? とか無駄に考えた記憶がある」
「あー分かる! 二人とも名前は簡単なのにねえ」

その二人の先輩は朧げにしか覚えてない。
けど、久々知先輩のお陰で六年生の名前が分かった。
髪の綺麗な先輩が立花先輩で、怖い先輩が中在家先輩。それと、善法寺伊作先輩。
……もしかして、そのためにわざと話題を振ってくれたのか? いやいや、まさかね。
そうだとしたら久々知先輩はエスパーだ。

「すまん、遅くなった」
「うわ、八左ヱ門ボロボロ」
「へーええすけええ! 俺もう嫌だ次先輩呼びに行くのお前だからな!」
「あーうん、覚えてたらな」
「あははは! すまんすまん、八左ヱ門を見るとついテンションが上がってな!」
「犬かお前は」
「……大型犬だな」
「なるほど、だから生物委員に懐いているのか」
「私は人間だぞ?」
「「お前は人間じゃない」」
「……相変わらずだな七松先輩。お疲れ八左ヱ門」
「新たなトラウマが……」
「……お疲れ」

ぐったりした竹谷先輩を隣に置いて(寝かせてと言うほど優しくなかった)、久々知先輩はテキパキと新しくやってきた先輩方にお茶とお茶請けを用意する。
やっと委員長が全員揃ったので、ようやく委員長会議が始められるわけだ。
話の流れからすると、何故か泥まみれの先輩が七松先輩で、隈のある先輩が潮江先輩、でいいのかな?
ちゃんと覚えとかないと。

「よし、じゃあ始めるか。久々知」
「はい。前期の予算移動、必要経費その他諸々の資料です」

潮江先輩の言葉に、久々知先輩はテキパキと資料を全員の元へ配る。
わ、会議っぽい! じゃないや、ちゃんと見とかないと。
図と説明が描かれた資料は凄く読みやすいと思うけど、全員分手書きだ。もしかしてこれ、久々知先輩が全部書いたのかな? ……え、そういうのも代理の仕事だったりする?

「とりあえず今期の予算会議は予算移動後の予算額を元に調整することにしようと思っとるんだが」
「ちょっと待て。前期は仕事が少なくて予算もあまり使いこむことが無かったから生物に充てることができたが、うちの予算が通常それでは困る」
「うちはそうしてくれる方が助かります。保護してる動物がまた増えて……」
「生物は動物飼いすぎだろ。拾ってくるのやめろ」
「いやいや、怪我してる間だけっすよ?」
「それならうちも多めに欲しいなー。生物の毒虫とかの被害に遭う生徒が結構いるからさ」
「噛まないように躾てるんですけど……」
「そういう問題じゃないだろ」
「まず逃がすなよ」
「……七松先輩が」
「「ああ……」」
「とりあえず体育は予算ばっさり削るか」
「ええ!? 何故だ!」
「今の会話聞いてなかったんか!」
「そもそも体育ってそんなに予算いらんだろ。一番かかるのが修繕費ってなんだよ」
「仕方ないだろう、すぐ壊れるんだから」
「壊れるんじゃなくて壊してんだろ。なんでお前の失態でうちの予算削られなきゃいけないんだ」
「それを言うならうちもですよ!」

途端にヒートアップする会議を呆然と見る。
これは先輩に喧嘩売るどころか混ざれないって。
さすがに手は出てないけど時間の問題な気がする……!

「とりあえず小平太の問題は置いておいて。図書と火薬はいいのか?」

と思ったら、いい具合に潮江先輩が話題を移した。
さすが先輩、手慣れている。

「うちは、小平太被害も無いから……。現状維持で良い」
「うちもそうですね。強いて言えば凍み豆腐分の予算がほしいです」

資料をパラパラとめくっていた中在家先輩と、何やら只管紙に書き込んでいる久々知先輩がそう答える。
何書いてるんだろう? っていうか、凍み豆腐って……? 委員会にいるのか……?

「お前はまた豆腐か!」
「委員会を趣味の時間にするのもいい加減にしろよお前は」
「違いますから。まあ普段が普段なんでそう思うのも仕方ないと思いますけど違いますから。寒いんですよ焔硝蔵が!」

先輩方の呆れたような視線に、久々知先輩が若干キレたようにバシーン! と机を叩いた。
いや、焔硝蔵の寒さはなんとなく想像がつくけど。あそこ夏でも涼しいから冬は相当寒いってのはなんとなく分かるけど。

「焔硝蔵の寒さと豆腐の関係性が分からん」
「仕事しながら作って、仕事が終わったらすぐ食べられるじゃないですか。甘酒より時間も値段もかからないしいいかなって」
「あー、なるほど……」
「温石も考えたんですけど、うちにはドジっ子がいるんでなんか爆発させそうな気がして。食べ物なら焔硝蔵の中で何かすることはないですし」
「さらっと恐ろしいこと言うなよお前……」

ドジっ子って恐らくタカ丸さんだよな。一年生も二年生も久々知先輩もしっかりしてるし。
さすがにそんなことはしないだろうと言いたいけど、言いきれないのがあの人の怖いところだ。
というか。

「温石って焔硝蔵に入れても大丈夫なんですか?」
「懐に入れて持っとくだけなら火はつかないよ。あんまり熱すぎるとちょっとヤバいけど。あと焼きすぎたら火花出るから、それはダメだね。爆発する」
「なるほど……」
「だからさらっと言うなと」
「それにどのみちすぐ冷めるじゃないですか。冷めたらまた温めたくなるじゃないですか。焔硝蔵の中で焼き始めるじゃないですか。爆発じゃないですか」
「あー、分かった分かった、温石を使えない理由は分かった。……まあ、考慮はしておく」
「やった」
「なんでだよ!」
「ズルいぞ久々知だけー!」

文句を言う七松先輩と食満先輩に、久々知先輩はにこりと笑った。

「じゃあ一日焔硝蔵体験します?」
「仕方ないな、凍み豆腐くらい許可してやれ文次郎」
「そうだな、そんなに高価なものでもないのだし許可してやれ文次郎」
「分かりやすいなお前ら」

久々知先輩以上の良い笑顔で言い切った食満先輩と七松先輩。
何が凄いって六年生相手に一歩も引かない久々知先輩だ。俺は五年生すら詰め寄られたらちょっと怖い。

「まあいい、話を戻すぞ。今期の予算移動は……また生物だったな」
「すみません、孫兵のペットがまた増えて」
「生き物相手だと仕方ないよねえ。それに、必要な毒草だったからこっちも助かったよ」
「ああ、保健から生物へ、ですか」
「うん。証文は後ででいい?」
「大丈夫ですよ」

そういえば、さっきからずっと久々知先輩は何してんだろう?
発言中も手元を見たり見なかったりしつつも手は動かしたままだし。
覗き込めたらいいんだけど、邪魔になりそうだしちょっと場所的にも難しい。
というか、先輩方みんなスルーしてるけど予算移動の証文を久々知先輩に見せるの? 会計委員会じゃなくて? ……謎だ。

「他に予算移動があった委員会は?」
「あ、図書から用具に。修繕費とか諸々」
「証文あります?」
「……あー、今書いてもらってもいいだろうか」
「お前なあ」
「悪い悪い、実習でバタバタしててよ。悪いな長次」
「構わない。……私も忘れていたし」
「そりゃ仕方ないな!」
「長次が覚えてないってことは相当バタバタしていたんだろう」
「おいこら」

他の先輩が頷く中、中在家先輩はマイペースに証文を書いている。
からかわれる食満先輩につい笑うと、目ざとく見つかってしまった。

「守一郎、お前まで笑ってんじゃねえよ!」
「へあっ! すみません!」
「守一郎って変な悲鳴ばっかり出すよね」
「出したくて出してるわけじゃ……!」
「なになに? さっきも変な悲鳴出したの?」
「うん。さっきはへぇっ!? って言ってた」
「ぶはっ!」
「おお凄い久々知! そっくり!」
「ちょっ、久々知先輩!」

声の裏返り具合まで一緒だった。なんだこの先輩すげえな!
けど恥ずかしいのでやめてほしい。いや、でも、先輩方は爆笑してるからいいの、か?
喧嘩売るよりはいいか。



一通り会議することは終わったのか、そのあとはずっと談笑が続いた。
今度は潮江先輩も止めるどころか混ざってたから、本当にもう会議は終わりなんだろう。
六年生がいろいろと話し込んでいる中、五年生の先輩二人は隣同士に座って話し込んでいる。

「これはもう処分?」
「うん。あとでまとめて焼く」
「ついでに雷蔵の部屋のいらん物も燃やそうぜ」
「いいけど、掃除するのやだよ俺」
「大丈夫、今日学級委員会無いらしいから」
「おお、珍しく手際いいじゃん」
「珍しくは余計だっつーの」

お互いの顔は一切見てないけど、久々知先輩は書類を見ながらガリガリと相変わらず何かを書いていて、竹谷先輩はさっき配られた資料とか証文とかをまとめながら会話している。
珍しくとか言ってるけど、結局どっちも手際良いです先輩方。

「そういえばお前、喜三太のナメクジ見分けつくってマジなの?」
「えっ……誰から聞いた?」
「えーと、喜三太発信三之助経由?」
「何お前三之助とも仲いいの」
「や、一回数馬に手当てしてもらって、数馬の勉強見てたら藤内も加わって……って感じで自然と」
「俺自然と後輩の輪広げられないんだけど。何それ羨ましい」
「で、喜三太のナメクジ見分けつくの?」
「あー……まあ、大体は」
「ほんとお前ムツゴロウさんだな」
「うるせえよ」

マジか! ナメクジって見分け付けられるんだ!
見分け方とかあるのかな。模様とか?
俺も何度か喜三太にナメクジを見せられたことはあるけど、見分け方なんて分からなかった。
生物委員会ってそういうものなのか、凄いな、と思っていると食満先輩が竹谷先輩の前の机に勢いよく手を置いた。バンッ! ってすごい音がした。
ビックリしたのが俺だけってどうなのと思う。忍だからなのかこれが日常なのか。

「八左ヱ門! 見分け方教えてくれ!」
「そ、そう言われても……ほとんど勘なんですけど」
「勘!?」
「野生の勘か」
「野生って何! 俺は人間ですけど!」
「いや、結構小平太に近いから野生寄りの人間なんだと思う」
「野生寄りの人間て何スか!?」
「お前のことだ八左ヱ門」
「いや違いますし!」
「なんだ私に似てるのか? じゃあ一緒にマラソン行くか!」
「行きませんし! やめてください!」

あ、ちょっと分かったかも。この先輩、凄くからかい甲斐のある先輩なんだな。
六年生が喜々として竹谷先輩に絡んでいる。
仲良しなんだなあ、と本日何度目かの感想を抱いていると、久々知先輩が音もなく俺の隣に移動してきた。

「お疲れー守一郎」
「あ、先輩もお疲れ様です。あの……竹谷先輩は」
「ああ、アレはいつものことだからいいんだ」
「いいんですか……」

結構困ってるように見えるけどそうでもないんだろうか。分からん。
久々知先輩は俺の隣で書類を書き殴っている。
何を書いているのかと覗き込めば、今日の会議の内容をまとめみたいだった。あ、なるほど、会議中は会議の内容メモってたのか。

「これって五年生持ち回りですか?」
「いや、最初のうちは二人でやってたんだけど、八左ヱ門こういうの苦手でさ。いつの間にか俺だけになってた」
「いつの間にかって……」
「はは、お前達の時はお前達で話し合って決めればいいさ。来年は代理の方が多いから俺らも出来るだけサポートするし」
「先輩頼もしい……!」
「あはは!」

本音ですよ、と言ったら分かってるよ、と返された。なんだこの先輩男前か。

「けど、先輩の中に二人だけ後輩って緊張しません?」
「んー……まあ、付き合いも長いからねえ。別に取って食われるわけじゃないし」
「あ、そっか。四年も一緒にいたら流石に慣れますよね」
「だね。ある程度の無茶振りは慣れたし」
「無茶振り?」
「こっちの話。つっても、先輩方お前達には優しいんだからそう緊張することもないのに」

くすくすと笑う久々知先輩。
お前達「には」ってどういうことだろう。五年生には優しくないとか? ……でも今日の会議ではそんな感じ無かったけどなあ。

「やー、緊張はしますよ。怒らせたら嫌ですし」
「理不尽なことで怒る先輩はそんなにいないから大丈夫だよ」
「それは分かってますけど……」
「大丈夫大丈夫、ここで過ごしてたら怒られるのも悪くないって思えるから」

ぽんぽんと肩を叩かれてにこりと微笑まれる。
その笑顔にたまらなく安堵した、と同時に鐘が鳴る。

竹谷先輩とわちゃわちゃしていた六年生が腰を上げた。

「今日の会議は終わりだ。久々知、明後日までには議事録提出しろよ」
「はい。お疲れ様でしたー」
「よーし、守一郎帰るか」
「あ、はい!」
「お疲れー」
「お疲れ様でした!」

これから五年生二人は会議室の片付けをして、会議で使った書類を燃やすのだろう。
そこまでしなくてもいいと思ったけど、どこで情報が洩れるのか分からないから仕方ないのか。予算の情報が漏れたら怖いもんな。

「そんなに緊張することも無かっただろ?」
「そう……いや、でも久々知先輩がいなかったら多分緊張してました」
「そっか……まあ、こういうのは慣れだからな。ゆっくりでいいさ」
「はい!」

食満先輩にぽんと肩を叩かれる。
今までは怒らせたくなくて先輩よりも後輩と話すことが多かったけど、これからはもっと先輩とも関わっていこうかな、とふと思った。

そんで、俺も来年は先輩としても後輩としても頼れる存在になりたいと思う。
けどその前に、怒られることも悪くないって思えるようにならないとな。








――
落ちってなんだろうね。なんだか凄くグダグダになった……。

改めて六年→五年の呼び方を見て、やっぱり兵助は苗字呼びが多いなーと思ったので。
んで、他の五年はなんか先輩受け良さそうだなーと。
んで更に、アニメ見てたら兵助って後輩には普通に慕われてるなーとか(雪景色とか、滝夜叉丸と乱きりしんは豆腐に喜んでたし)、二次でも結構「一番まとも」な扱いを受けてることが多いので、実は後輩受けよかったらいいな! と妄想った結果がコレです。
ちなみに、八左ヱ門と三郎はからかい甲斐がある的な意味で、勘右衛門と雷蔵は普通に可愛がられてるといいです。
勿論だからって兵助が可愛くない後輩ってわけじゃなくて、しっかりしてるので普段は「手助けいらんなー」と思いつつ放任してるけど頼ってきたら内心凄く喜ぶ先輩達とかだといいと思います。好き。







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