五年生と仙蔵






「お前達は怠い」

実習中、立花先輩が呟いた。
振り返ると随分と嫌そうな顔をしている。
視線の先には自分と同じ、藍色が見えた。

「……怠い、とは」
「怠い、という意味だ」
「…………はあ」

いまいち要領を得ない。
突然怠いとだけ言われても、どう反応すればいいのやら。
先輩は一人で勝手に完結しているのか、それ以上は何も言わない。
怠い……怠い、ねえ。
その言葉は普通、仲間内には使わないような。
考えながら先輩の視線の先を辿ると、同級生が二人走ってきた。
自分も先輩もよく知っている者達だ。
先輩の気配はない。
しかも片方は怪我をしている。
先輩をちらりと見ると、好都合だ、と形の良い唇が動いた。

「っ、兵助! と、立花先輩……!」
「っ……」

怪我をしている方を狙うと、咄嗟にもう一人がそれを庇う。
先輩がするりと二人の間に割って入った。
揃って逃げることは不可能。

「っち……おい! ぼくを置いていけ八左ヱ門!」
「んなことできるか馬鹿雷蔵が!」

先輩が嫌そうに顔を歪めた。

(……ああ、なるほど?)

先輩が言いたいことが分かった気がする。
確かにこれは、怠いかもしれない。

「先輩」
「なんだ」
「意味が分かりました」
「そうか」

雷蔵と八左ヱ門が揃って首を傾げた。
先輩が喉の奥で笑う。
きっと、今の状況なら自分も同じ選択をする気がする。

「まあ、でも」

仲が良いとよく言われる学年だけれども。

「手加減は一切しませんので」

目を細めると、雷蔵と八左ヱ門の肩が揺れる。
先輩が大声で笑った。





――
どちらかと言うと、兵助は六年生寄りな考え方をしている気がする。
冷徹……?というか、いざという時は仲間を切り捨てる覚悟があるというか。
五年生もたぶん全員いざという時はそれができるけど、0.001%でも生き残る可能性があればそれに賭けたい。なので、もしそういう時がきたら真っ先に兵助に自分達を切り捨てるように頼むのかなあと。
分かってるし、たぶん出来るけどそれが癪な兵助。五年生のそういうところが嫌な仙蔵。嫌だけど、少し羨ましいとも思っている。
そういう複雑な上級生心が書きたかった。
なんかもうちょいふわっとした感じで書きたかった。難しい。

いや、仲良し五年生の作品見て心底だっるいなあと思っただけなんだけどね。笑




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