祓い屋久々知と式神犬猿
*普段は普通に学園の生徒
*キャラが妖注意。でも描写はない
*久々知が犬猿呼び捨てしてます
ひらひらと紅葉の落ちる中を、無言で進む。
清涼な空気を醸す艶やかな黒髪の男は、隣を歩く頑強な厳つい顔の男をちらりと盗み見た。
視線に気づいた男が、隈に縁取られた目をぎろりと動かす。
「兵助さま、お疲れでは」
見た目に反して相手を気遣う優しい声音に、前を歩いていた細見の、しかし目つきの悪い男が振り返る。
「兵助、大丈夫か? 休むか?」
「……留三郎、『さま』を付けろと言っとるだろう」
「良いじゃん、俺はお前と違って兵助と友達だったんだから」
「今は主だろうが!」
「気にしすぎなんだよ文次郎は」
「お前が気にしなさすぎるんだ!」
学園にいる時と何ら変わらないやりとりに、兵助はくすくすと笑う。
その声に気づいたのか、式神二匹は黙り込んで兵助を見やった。
「二人とも、ありがとうございます。言葉遣いは気になさらなくていいですよ」
優しい声にほら、と笑ったのは留三郎で、文次郎は溜息をついて苦々しい顔を兵助に向ける。
「留三郎を甘やかさないでください。いくらあいつが本家の式神じゃないからと言って、主に敬語を使わないなど……兵助さまの沽券に関わります」
「沽券なんて気にしてませんよ。そんな体裁ばかり気にするのは本家の者だけです」
「兵助さまも本家の者でしょうが……」
「元ですよ、元」
なにが楽しいのかころころと笑う兵助に、文次郎はもう一度大きな溜息をついた。
「兵助! ちょうど木陰があった! 休もう!」
「留三郎!」
「あー、分かった分かった、兵助さま、休もうぜー!」
「敬語を使え!」
怒鳴り合う声に反応するように、紅葉が落ちてゆく。
楽しそうに微苦笑してから、兵助は隣で怒鳴る文次郎の手を引いた。
「ほら、文次郎。留三郎も、一緒に休みましょう。これからたっぷり働かなくてはならないのですから」
「そうだな」
「だからお前は……はあ、もう。分かりました」
諦めた文次郎の頭上で、ひらひらと紅葉が踊っていた。
――
書きたいのになぜかどうしても途中で詰まるので、導入部分だけ書いてあげるという暴挙。
犬猿コンビはかなり高位の妖という裏設定。