六年生vs小平太&兵助

*キャラ崩壊
*五年生と六年生の二人一組での札取り合戦
*一人一つ札を持ち、取られたら終わり
*ペアで最後まで残るか、六年生か五年生が全滅したら実習終了
*札を取られない限り、自分のペアが札を取られても終われない。一人で頑張れ
*そんな感じでいざ勝負(適当)








飛んできた打撃をひょいと避け、大きく後ろに跳ぶと兵助はそのまま走り出した。
鉄双節棍を放った留三郎も後を追う。

「逃げんじゃねえぞ久々知ぃ!」
「ぎゃあああ! 先輩目がマジすぎて怖ええ!」
「やめろ変な意味に聞こえる!」
「……食満先輩が襲ってくるううう!!」
「久々知てめええええ! ちょっとセリフ考えてんじゃねーよ!」

余計なこと言うなと手裏剣を打つが、兵助はそれを難なく避ける。
あいつ後頭部に目でもついてんじゃねーの、と留三郎が思っていると、近くに見知った気配が現れた。
殺気を感じ、節棍で防ぐと目の前には袋槍。

「文次……!」
「久々知を襲ったって?」
「襲ってねーよ!」
「まあどっちにしろ、あいつは俺の獲物だ。手出しはさせねえ」
「なっ! ……ふん、なら、勝った方が久々知をものに出来るってわけだな」
「そういうことだ」

にやりと互いに笑みを交わすと、一度距離をとる。
そして互いに向かって走り出した。



「久々知、よくやった」
「食満先輩なんか違う意味で怖かったです」
「……後輩大好きだからな」
「ほんとに単なる後輩好きですか? なんか違う危機感が」
「あーあーあー、あいつはただの後輩好き! やめろ!」
「すんません」

闘う犬猿コンビを木の上から眺めながら、兵助は自分のペアである小平太に木札を渡す。

「とりあえずさっき取ってきた分です」
「八枚か……意外と取ってきたな。お、六年のもあるのか」
「ぶっちゃけて良いですか」
「なんだ?」
「い組の先輩なんですけど、ペアになったろ組の奴が虐げられてたんですよねえ」
「……あー、いるよねそういう奴」
「これはそのろ組の奴が献上してくれました」

仲間を盾にされた時の五年生の変わり様はあの五人組以外でも手を焼く。
互いに闘う時はいつでも本気で闘うが、闘う気がない時は本気で手を抜くのが五年生だ。
この後その六年生は散々な目に遭うだろう。ご愁傷様。

「というか、留三郎と文次郎のペアはどこ行った?」
「八左ヱ門と勘右衛門なら、三郎と雷蔵と四つ巴繰り広げてましたよ」
「おいおい、壮絶だな」
「関わりたくないので逃げてきました」
「じゃあ伊作と仙蔵も近くにいるのか」

言い終わる前に、小平太と兵助は同時に木の上から飛び上がった。
今いた場所にカカカッと棒手裏剣が刺さる。
小平太と兵助はそれぞれ別の木に飛び移ると、一瞬視線を交わす。
そして同時に別の方向へ姿を消した。

「うわ、あの二人ってあれだけで意思疎通できるの?」
「意外だな。一番噛み合わないと思ってたんだが」
「久々知はよく見てるからな」
「読心術でも会得してんじゃねーの」
「「うわっ」」

兵助を追いながら伊作と仙蔵が話していると、留三郎と文次郎が後ろからにゅっと顔を出した。
驚く二人に犬猿コンビが軽く挨拶していると、前方にいた兵助がはあぁっ!? と声を上げる。

「意味分からんなんで四人共俺ばっか狙うんですか!?」
「そりゃあ!」
「お前の!」
「実力が!」
「知りたいから!」
「怖いわ! ちょ、マジで無理無理誰か助けて!!」

伝令役を任されるほど足の速い仙蔵と張り合えるだけの脚力を、兵助は持っている。
デッドヒートを繰り広げながら叫んだのも虚しく、現れたのは敵だった。

「久々知」
「なーんーで中在家先輩!? しかも戦闘準備万端じゃないですか!」
「……私もお前の実力には興味がある」
「勘弁してくださいよっ!」

言いながら長次の縄ひょうの軌道を苦無で逸らす。その先には小平太以外の六年生がいるが、勿論受ける者はおらず。

「チッ」

縄ひょうに気を取られた隙に間合いを詰められた。
両側から鉄双節棍と袋槍が音を立て、兵助は敢えて長次の方へ跳んだ。

「っ、」

そのまま苦無で斬りかかると、長次も苦無で応戦する。
背後で節棍と袋槍のぶつかる音が聞こえた。

「……小平太みたいな奴だな」

長次がぼそりと呟いた言葉に反応することなく、兵助は長次から視線を外さないまま焙烙火矢を放とうとしていた仙蔵の手元に棒手裏剣を打つ。
仙蔵がそれを避けた時、風に紛れて甘い匂いを嗅ぎ取った。理解する前に、条件反射のように口布を上に上げる。

(毒……善法寺先輩か)

頭の中は冷静に。
長次が苦無を動かす前に兵助は長次の肩に飛び乗り、ひらりとそのまま風上の方へ逃げて行く。

「チッ……久々知は鼻が良いんだね。知らなかったよ」
「伊作!」
「霞扇が効かなかったのか?」
「久々知もそれなりに耐性あるからな。伊作ほどではないが」
「一番は八左ヱ門だけどね。僕は二番」

兵助が去って行った方角を見ながらそう言う仙蔵と伊作に、犬猿コンビは嘆息した。




「七松先輩!」
「おう、五年生はあとお前だけらしいぞ」
「え!?」
「六年生が襲ってくるな。楽しみだ」
「さっきやっと逃げたのに……」
「五人か? 毒の臭いがする」
「そうです。私本気で隠れててもいいですかね」
「別に構わんが、あの五人とやる時は来いよ。さすがに五対一は骨が折れる」
「そこに私がいたら物理的に骨が折れそうなんですけどもね!」
「……文次郎か留三郎くらいだろう」
「あとのお三方は綺麗に折りますよ」
「経験済みか?」
「ご想像にお任せします」

木の上で小平太と落ち合った兵助は、小平太の情報に本気で逃げ出したくなった。
しかし、隠れていても良いと許可は下りている。

「では、あの五人が来られるまでは本気で隠れます」
「ああ。指笛を鳴らしたら来い」
「了解です」

立ち上がり、兵助を探す六年生を見下ろしながら小平太は笑った。
寸鉄を使う兵助は、油断させることが何より得意だ。口八丁手八丁を使う時もあれば、気配や殺気を完璧に消して逃げたと油断させて仕留める時もある。
つまり、上級生の中で一番「見つからないこと」が上手いのだ。

「さて、終わらせるか」

小平太はにやりと笑うと、下にいる六年生に野獣のような威圧感を向けた。






ピイィ、と指笛が響き渡る。
何事かと己を見つめる五人に、小平太は満面の笑みを向けた。

「今回は五人相手でも負ける気しないんだよな」

す、と小平太の隣に降り立つ青藍。
気付かなかったと五人は目を見開いた。

「久々知、……まだ残ってたのか」
「というか、私が最後の五年になってから誰とも闘ってませんし?」
「ほう……ずっと逃げていたということか」
「それはもう全力で」

にっこりと微笑んだ兵助に、嫌味を言った仙蔵の額には青筋が浮かぶ。
毒も効かない。五車の術も効かない。本当に忍らしい忍のようで。

「っとに可愛くねえ」
「同感」
「右に同じ」
「……左に同じ」
「えっ……下に同じ」
「いや意味分からんぞ留」
「うっせえ!」

小平太の冷静なつっこみに返しつつ、五人は兵助を見据えた。

「先輩方、さすがに怖いです」
「いや、小平太の威圧を物ともしないお前が怖いこたないだろ」
「はあ!? 怖いですよ! どんだけ俺らあんた達にトラウマ植え付けられたと思ってんですか!」

逆ギレのようなその言葉に、しかし六年生は静まり返る。
初めて出来た後輩をいろいろと捻じ曲がった方向に構い倒し、全力で避けられるようになった過去は六年生の黒歴史だ。

「それは……すまん」
「申し訳ない……」
「……ごめんね?」
「すまない……」
「悪かったな……」
「…………悪い」

兵助の一言は味方にまで大ダメージを与えてしまった。

しかし、頭を下げる五人に見えない位置で兵助と小平太の目が光る。
そしてずうんと空気が重い五人の懐から、しゅばばば! と素早く木札を抜き取ったのだ。

「「ああーッ!?」」
「!?」
「なんっ……久々知ィ!?」
「小平太ァ!」
「謀ったなてめえら!」
「だって私達」
「忍たまですから!」

ぱん! と手を合わせる二人の背後で、実習終了を告げる狼煙が上がった。

「納得いかねえ……」
「久々知と闘いたかったよ……」
「くっそ!」
「久々知後で勝負だ!」
「……お疲れ」
「楽しかったぞ久々知! また組もうなー」
「こちらこそ! 先輩方、お疲れ様でした」

ぶつくさと文句を言う六年生に、兵助は爽やかに笑って返す。
なんだか更に負けた気がした。






――
息抜きに書いてたら楽しくなってこんな長さになってしまった。ギャグなら兵助も六年生に勝って良いんじゃないかと思った。後悔はしていない。
戦闘書くの難しいけど楽しい。もっと勉強します。

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