めっそり兵助と助けてくれる小平太




たすけて。

声にならない言葉を、ずっと笑顔の裏に隠していた。
見せたくなければ気付かない。誰も、誰も。

「兵助?」
「ん?」

覗き込まれた顔に、平静を装っていつも通りに返す。
その目は心配を滲ませていたけれど、微笑むことで追求させない。何も尋くなと、線引きする。

「……何かあったら言ってよ、」
「うん。ありがとう」

そう、それでいい。
放っておいてくれればいい。
またそのうち、いつもの俺に戻るまで。



兵助の様子がおかしいと、気付いたのは五年生だけではなかった。
火薬委員会の後輩達も、直接関わりの無い後輩達も、先輩も、勿論先生も、みんな兵助を心配している。
それに気付かないほど兵助は馬鹿じゃない。だけど、兵助は何も言わなかった。
誰がどれだけ話を聞こうとしても、あの微笑みを向けられて拒絶される。
どうして、なにを恐れているの。
聞きたいけれど、聞けなかった。

「久々知」

動いたのは小平太だった。

「なんでしょう」
「……お前は、馬鹿だなぁ」
「…………知ってますよ」

小平太が見た兵助は、困ったように笑いながらはらはらと涙を零していた。

「頼れば良いのに」
「……頼れないんですよ」
「……本当に、お前は馬鹿だ」

みんな、お前を甘やかしたくて仕方がないのに。
普段からでは考えられない優しい力で兵助の頭を自分の胸に押しつけると、小平太は眉尻を下げた。

「いつでも、助けてやるから」

一人で抱え込むなよ。
今度は強く抱き締めた。






――
めっそりした曲を聞いてめっそりしてたらめっそり兵助になった。


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