真っ黒火薬委員会



どかん! と大きな音が学園中に響く。
曲者か、と各教室から音の発端を探し、ぞっとした。

「焔硝蔵に穴が……」

その威力に恐怖したのではない。
その場所を管理する番人の怒りに恐怖したのだ。

「……ああ、遅かったか」

六年生が大慌てで焔硝蔵へ向かうと、既にそこには四つの影。その前には二人の曲者らしき男達が縛られ転がされていた。

「で? あんたらどこの城ですか?」
「…………」
「聞こえませんけど?」
「ひぃっ……!」

どす黒いオーラを放ちながら真顔で睨みつける伊助と三郎次。

「目的は火薬、ねぇ……兵助くん、なんなら身を以て火薬の力を味わわせてあげたらどうかな?」
「ああ、いいかもな。大層うちの火薬を気に入ってくれたようだし、火薬で死ねるなら本望だろう、なァ?」
「っ……! っ!」

見た者を凍らせるような絶対零度の笑みを浮かべるタカ丸と兵助。

「……火薬委員会がブチ切れとる……」
「……焔硝蔵壊されちゃあな……」

六年生は遅かったか、と肩を落とし、そそくさと安全な場所から眺めている。
人数が少ない、仕事が地味、最上級生がいない……しかし、攻守の要を握る責任の重い危険な委員会。

「仲間は……他にもまだいるようですね。顔に出ているので気をつけたほうがいいと思いますよ。まあ、生きて返しませんけど」
「ああ、心配しなくても大丈夫ですよ。ぼくらの先輩方は一突きで終わらせてくれますから」
「そりゃあそうだよ、極力触りたくないもんこんなの。あーあ、火薬さえ狙わなけりゃおれ達何もしなかったのに」
「ま、学園を狙った時点で終わりだけどな。あんたら、俺らが管理する火薬なら持ち出せるとでも思ったんだろ」

兵助の言葉に、愉快そうな笑い声が響く。
ぞわりと背中が粟立つような不快な笑い声。
舐められたなあ、舐められましたねえ、とそれさえも愉しいと笑う。

「火薬委員会怖ええ……」
「うわあ、ぞくっとした! 今の笑い声めっちゃぞくっとした!」
「あいつら益々怖くなってやがる……」

六年生は身震いする。
内でも外でも軽視されがちな火薬委員会。
たった四人、しかも兵助を除けば下級生二人に、下級生と大差ない編入生。
それでも火薬を守る彼らを、未だ破った者はいない。

「さあ、終わらせようか」
「「はーい」」

徹底管理と、火薬を強請る生徒を言いくるめられるだけの話術、火薬委員会だけが持つ人脈と情報網。
そして、敵には容赦の欠片もない無慈悲さ。

「あ、先輩方」
「お、おお! なんだ?」
「ぼくたちこれから敵の殲滅に向かうので」
「焔硝蔵の修補をお願いしたいんですけど」
「ていうか、やってくれるよね?」
「敵を侵入させたの、先輩方ですもんね?」
「いつものように喧嘩して、するっと入られちゃったんですよね?」
「なら、それくらいやってくれますよね?」

にこにこと笑いながら続ける火薬委員会に、六年生は冷や汗を流しながらこくこくと頷く。
すると、黙っていた兵助がニヤリと笑った。

「では、お願いしますね。先輩方」

その冷え切った言葉に、「喧嘩して更に焔硝蔵壊しでもしたら次はないです」という真意を的確に読み取ってしまって。

「火薬委員会怖い……」

先輩だろうが教師だろうが、四人とも物怖じしない。地味委員会と揶揄われても、落ち込んだ振りをして嘲笑っていた。
火薬は攻守の要。
それを守る者達は、学園の中でも最も恐ろしい委員会。

「お前達、これから殲滅戦か?」
「あ、土井先生」
「そうです、狩りに行きます」
「先生もご一緒にどうです?」
「焔硝蔵は先輩方が直してくださるそうなので」
「六年生が? ……へえ、更に壊してくれるなよ」

勿論それは、顧問も含まれるわけで。

((土井先生も怖い……!))





――
火薬委員会最強説。
ふと思い返してみて、四人ともあんまり物怖じしない性格だなーと思ったので。
体育委員会に焙烙火矢ぶちかましたり、伊助ちゃんは大胆な性格だし、ろじもわりと先輩に対してずけずけ言うし、タカ丸もタソガレドキに喧嘩売ったし。兵助もアニメで文次郎に予算の直談判しに行ったり、まあ寸鉄使いですし、あんまり恐怖感じなさそうですよね。
で、火薬委員会て実はめちゃくちゃ大事な委員会だと思ったので、一見弱そうだけど任せられるだけの何かがあるんだろうなあと妄想。滾る。
真っ黒火薬委員会、滾る。委員長(代理)しかそのこと知らなくて「やべえ火薬激怒じゃんこれ怖えええ」ってなるのも楽しい。妄想はつきません。

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