とある久々知と五年生
*現パロ
寒い寒い、冬の夜だった。
行く宛なんて無くて、帰る場所もなくて、落ちていた段ボールを拾ってくるまり、ひたすら寒さに耐えていた。
雪まで降ってきやがるもんだから、「あー下手したら今日までの命かもな」なんて柄にもなく考えているとふと目の前が陰る。
つられて目の前を見ると、男だか女だか分からない中性的な顔立ちの美人がじっと俺を見ていた。
「……何か用?」
「……家が無いならうち来る?」
「は?」
思ったより低い声だったので男だと判明した。
それはいいのだが。
突拍子過ぎやしないだろうか。無表情のまま淡々と凄いことを言うな。逆にこっちが心配してしまう。
「えと、一つ聞いて良いか」
「ん」
「何で見ず知らずの俺を?」
そう尋ねると、そいつは困ったようにこてんと首を傾げて頬をかく。
「何で、って言われても……」
そして、俺の隣にしゃがんでぽつりぽつりと呟くように話し出した。
表情は相変わらず困ったままだ。
「俺、普段はあんたみたいな人とか視界にも入れないような人間、なんだけど。なんか…たまに、”離れちゃだめだ“って思う奴がいるんだ」
「……それ、俺以外にも拾ってるってことか」
「拾うって……まあ、そうだな」
はふ、と笑った拍子に白い息が舞う。
変な奴だけど、悪い奴ではなさそうだ。
「……よし、分かった。拾われてやるよお前に」
立ち上がってそいつに手を伸ばすと、そいつは大きな目を数回ぱちばちさせて、
「……ああ」
と微笑んだ。
「ただいまー」
「「おかえり!」」
「へーすけ遅いよお、双子マジ疲れる……」
「ごめんごめん、お疲れ勘ちゃん」
駆け寄ってきた小さな双子と、それより少し年上の少年。
どうやらこいつらが”拾いもの“らしい。
「……ん? ああ! へーすけまた!」
「ん? 拾った」
「なぁっ! へーすけ! 何でもかんでも拾うなっつってんじゃん!」
「だいじょーぶだって、悪い奴じゃないし」
「「何でそう言い切れる!」」
「勘?」
「あーもうっ!」
お母さんと捨て犬を拾ってきた子供のような会話をしつつ、双子の目つきが悪い方はぎろりと俺を睨みつけた。
「へーすけが拾ってきたから捨てはしねえ! が、へーすけに何かしたら即追い出すかんな!」
「悪いことしたらだめだよ!」
「へーすけに手え出したらシメるから」
「まあまあ三人とも。えっと、こいつらが俺の家族。今日からよろしくな」
愛されてるなあと微笑ましく思いながら、へーすけの手を取った。
――
何かこんな話ありそうだなあ。