兵助が敵なパロ

*殺伐とした五年
*双忍と左右が孫兵の護衛
*孫兵は伊賀の大事な跡取りって感じ(適当)
*今まで以上の雰囲気小説
*ゴマ豆腐。ブラッ久々知
*鉢屋と久々知の一族捏造
*呼称捏造






じゃり、と砂を踏んだ足音にゆっくり振り返る。
そこにいたことに気付いてはいたけど、私とは何の関わりも無いのに何か用だろうか。


「こんばんは、久々知先輩」

「こんばんは。……俺に用か? 孫兵」


級友の後輩。
そして、その背後に気配無く潜む四つの影。
殺気立たないでほしいなあ。


「何してるんです?」

「見ての通り、一人酒だよ。今日は四人共忍務でいないんだ」

「そうですか」

「孫兵はどうしてここに?」

「ぼくは、」


心理を読み合う言葉の応酬。
ああ、まどろっこしい。私こういうの嫌いなんだけどなあ。

孫兵は、私をきっと睨みつけた。


「先輩、貴方は気付いているんでしょう」

「何にだい?」

「はぐらかさないでください」

「はぐらかすも何も」


私の言葉を遮って、孫兵が苦無を持って走ってくる。
それを簡単に去なして苦無を弾き飛ばした。


「危ないじゃないか、どうしたんだいきなり」

「強硬手段に出たまでです」

「ふふ、怖いなあ、伊賀者は」

「っ――やっぱり、」

「うん、まあ……俺の観察力って結構凄いらしいから」


無自覚なんだけどね。
孫兵の顔が益々歪んでいく。怖いなあ。
後ろの四人は殺気を隠すこともしないし。


「どこまで気付いてるんです」

「どこまで、ねぇ。君がどこまで隠してるのか俺は知らないけど」

「ぼくが伊賀の長となることまでは知ってるんでしょう」

「そりゃあね。じゃあ――」


ひゅっと孫兵の首に寸鉄を宛てる。
同時に私の首に四つの苦無。
想像通りの展開に思わず笑みが零れた。


「私とこいつらがこういう関係だったってことに、君は気付いてた?」


孫兵が目を見開く。
私の後ろにいるのは私の同級生達。
周りは私達を友人だと思っているだろう、彼ら。


「こういう、って……」

「私は”久々知“だからね、見張られていたんだよ。最初からずっと」

「――なんだ、気付いてたんだ」


「鉢屋」に次ぐ暗殺集団「久々知」。
警戒されるのも無理はない。

敵に対する冷たい声音で勘右衛門は呟いた。
全く、血の気が多いのも困り者だな。


「それだけ殺気立ってりゃあ誰でも気付くだろう」

「久々知せんぱ、」

「ああ、安心していいよ孫兵。俺はお前の命を狙ってるわけじゃないから」


にこりと微笑み、寸鉄を仕舞う。
首にある四つの苦無は未だに外されることなくあてがわれている。
孫兵は顔が真っ青だ。
大事に育てられてきたんだろう。

――ああ、反吐がでる。


「さあ、もうお休み。明日も早いのだろ」

「っ……」

「孫兵」


名前を呼ぶと、弾かれたように駆けだした。
その後を追う一つの影。四つの影はここに残ったまま。
どれだけ過保護なんだか。


「孫兵は俺を殺しにきたんだろう」

「さてね。お前に教える義理は無いよ」

「そうだな。全く、お前達といると肩が凝って仕方ないよ」

「それはこちらも同じ事。漸く尻尾を出したな、久々知」

「ああ、それな。残念だけど――」


自然に、反応が遅れる程自然に、私は四人から距離を取った。
途端、塀の上に現れる二つの影。
その姿を見て、四人が息を飲むのが分かった。


「俺はとうに”久々知“とは縁を切られているよ」

「兵助が俺ってなんかおかしいよね」

「組頭、今そんな話はどうでも良いです」

「タソガレドキ――!?」

「久しぶりだね、五年生の諸君」


ニヤリと笑う包帯だらけのその姿。月に照らされ、その姿は益々不気味だ。


「何で……お前は伊作先輩の、」

「まあ気に入ってるのは確かだよ。でも、伊作くんがいなくても何れ兵助と適当に関わりを持つ予定だった」

「なん……」

「分からない? 雷蔵か三郎なら分かると思ったんだけど」

「――孫兵様を消す為か」

「まさか。――孫兵を懐に入れる為だよ」


伊賀者を手懐けられたら戦も大分楽になるだろう?


「それを、お前が望んだのか」

「左の?」

「兵助、お前は孫兵を殺したくなかったんじゃないか?」


――適わないな。
八左ヱ門の言葉に、喉の奥でくつりと笑う。
組頭と小頭が胡乱気な目で私を見てきたが、気にせず八左ヱ門に視線を向けた。


「流石ハチ、よく分かってるね」

「じゃあ、こんなことしなくたって、」

「敵に情けをかけると寝首かかれるよ」

「っ」

「八、敵に情が移るのはお前の悪い癖だ」

「――、分かってるよ」


八左ヱ門は何も変わらないな。
クスリと笑うと睨まれたけれど。


「兵助、もう良いかい?」

「ああ、すみません。つい」

「寂しがりはお前の悪癖だな」

「はは、そうですね」


のんびり会話をして、目の前の殺気立つ四人をじっくり見る。
本当に、いつのまにこんなに寂しがりになってしまったのやら。


「七日程学園を抜けるよ。学園長とは話をつけてある。火薬の子達には心配するなと伝えておいてくれ」

「何で僕らがそんなこと……っ」

「友達だろう?」

心にもないことを。
ぎっと睨みつけてくる四つの視線を無視し、塀へ上がる。
その時には既に紫紺ではなく、焦げ茶の装束になっていて。


「じゃあ、また会えたら良いな」


四人が追ってこないよう数人のタソガレドキの者が相手をして、それを横目に学園を抜け出した。








――
なんぞこれ笑



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