五年+六年×久々知でキスお題

title by「そしてまたキスをする10題(3)」確かに恋だった






1.キス魔だから(勘くく)

唇から、首筋、頬、まぶた、手、腕、髪。
いつもより高い体温は酒のせいか、それとも。
自分も同じように赤くなっている自覚はあるけど、後ろからがっちり抱きしめられているせいで動けない。
……というか。

「もういい加減離れろバ勘右衛門!」
「えー?」
「んっ……勘右衛門!」
「なぁにぃ?」

絶対酔っぱらった振りだろお前!





2.チョコより甘いキスをして(伊くく)

舞う花びらの中、淡々と言ったのは本来なら甘い言葉のはずだった。
それがそうならないのは、振られることが前提だから。
顔色すら普段となんら変わらない一つ下の後輩に、伊作は憮然とした表情になる。
それでも微笑んだままの彼は、どれだけの覚悟を決めてここに来たのか。

「……あのねえ、勝手に自己完結しないでよ。君がそういうつもりなら、僕だって覚悟決めたからね」

戸惑う後輩を抱き寄せた。

「一年、待ってて」

交わしたそれは、どんな砂糖菓子よりも。





3.不意打ちキスじゃ奪えない(鉢くく)

事故だった。そう、これは事故だったのだ。
視界の端に黒い笑みを浮かべる勘右衛門が見える気がするが、断じてこれは私のせいではない。というかそもそもそういう関係なのだから別に文句を言われる筋合いはないというかなんというか。いやしかし公衆の面前でこういうことをするのは流石に兵助に悪い、

「大丈夫か三郎」
「え? あ、ああ」
「そうか。じゃあ行こうか勘右衛門」
「あ、うん。兵助こそ怪我ない?」
「うん、ありがと」

あの野郎、何一つ動じてない……だと……!?

「……ああ、まあ、頑張れ三郎」

雷蔵の同情の籠った掌が肩に置かれ、八左ヱ門の同情の籠った声が背中越しに聞こえた。





4.あのキスを忘れない(長くく)

いつものように図書室で自主勉強をしていた。
いつものように部屋の隅の、周りに誰もこない特等席で。
いつものように夕暮れ時になって、生徒の数が減って。
いつものように最後まで残る俺に、その日の図書委員が声を掛けた。

「久々知」
「あ、はい。もう出ます」
「ああ、」

そうしていつものように、密やかに。





5.キスして欲しかったのにね、(文くく)

ねえ、先輩?
最後くらい、俺のワガママ聞いてくれたって良かったじゃないですか。

先輩のばーか。





6.間接キスのつづき(竹くく)

ほれ、と何気なく向けられたものに口を開けたのは条件反射。
何も考えずにもごもごと口を動かせば、それは今日の定食の小鉢だった。なんと俺の大好物。
次に俺の好物を覚えててくれたことが嬉しくなって顔が綻ぶと、察したらしい兵助が楽しそうに笑った。あ、その顔好き。
それから目の前の三郎の嫌そうな顔に首を傾げて、はたと思い至った。

「あっ、えっ、ちょっ、兵助さん兵助さん!」
「んー?」

横目でニヤリ。
ああそうか、確信犯か。

「……この後、なんもねえよな?」

確信をもってそう言うと、兵助は嬉しそうに笑った。





7.キスは契約違反です(食満くく)

利害の一致によって始まった爛れた関係。性欲処理ってやつ。
いや最初こそそうだったけど、今はたぶん、お互いにちゃんと愛情もあると思うのは俺の思い上がりではないはずだ。
身体は許すくせに心は許さねえって? はん。

「いいだろうが減るもんじゃねえし」
「絶対いや」

今日も後輩は、口から手を離さない。





8.気の済むまでキスして(こへくく)

好きで好きで仕方がないと思う。
けれど壊すことが怖くて、触れることすら躊躇っていた。
それをこいつは。

「あなたは絶対僕を壊したりなんかしませんよ。だから」

ああ、お前が自信たっぷりに笑うからだぞ。





9.犯したキスの数だけ(雷くく)

「ね、知ってる?」
「ん?」
「戀っていう字」
「こい」
「うん。あれね、いとしいいとしいと言う心って書くんだよ」
「へえ……ああ、なるほど。詩的だな」
「ふふふ、良いでしょ」

柔らかく笑うお前の髪に唇を寄せる。
お前への愛情は増すばかりで、一向に減る気配がないよ。
なんて、言わなくても分かってるだろうけど。





10.巻き戻してもう一度キスをしよう(仙くく)

私達は関係を終えた。離れることが互いのためだと思ったからだ。
それを伝えた時、あいつは困ったように微笑んで頷いた。
学園を出ていく日、あいつは私に頭を下げた。言葉は無かった。私も。
そうして、流れない涙は見ない振りをして、背を向けたのだ。

……それなのに。

「あ。お久しぶりです」
「……お前、どうしてここに」

数年が経って、入ってきた新人は驚く私に微笑んだ。

「やっぱりあなたのこと、諦められなく」

言い切る前に、身体が勝手に動いた。
言いたいことは山ほどある。けれど、どれも言葉にならず。
数年の溜まった後悔と積もった愛情をぶつけるように、ひたすら彼を掻き抱いた。







――
五月二十三日はキスの日だそうで。
……遅刻した上にすごく雑ですね。すみません。




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