火薬委員会忍務






月が明るい。
三郎次は忌々しそうに手をかざした。

「三郎次先輩、余所見してるとタイミング逃しますよ」
「お前じゃあるまいし」
「いやいや、先輩時々やらかすでしょ」
「常にポカやってるお前らと一緒にすんなっての」
「お前“ら”って、は組の方ですか、タカ丸さんの方ですか」
「どっちもだどっちも」

生意気な一つ下の後輩に溜息を吐いて座り直す。
目の前の城に忍び込んでいる先輩の合図は未だ。計算通りならば、ちょうど某国と密約を交わした密書を始末している頃だろう。
自分達は先輩達の脱出を手伝えばいいだけ。

「しかし、六年生も人使い荒いですよねー。普通“囮”をウチにやらせます?」
「仕方ないだろ。久々知先輩以外の五年生も出払ってたんだから」
「それはそうですけどぉ。こんなかわいーい後輩にそういうことさせますか」
「……自分でかわいいとか言うな」

こちらで騒ぎを起こせば、六年生の忍務がやりやすくなる。
火薬に関する情報を持ってきた先輩は、だから頼んだ、ととても良い笑顔で火薬委員に言ってのけた。
先に賄賂を持たされた以上動かないわけにはいくまい、と変なところで真面目な委員達は今夜城に忍び込んだのだった。

「そろそろかな?」

月を仰ぎ見た伊助が言った瞬間、パッと城の一角が光った。
閃光弾。
三郎次は冷静に伊助を見やる。

「まだだぞ」
「分かってますって」

パッ、パッと城のあちこちで閃光が瞬く。
二人の仕事が終わった合図だ。
十回目の光が走ったところで、三郎次は伊助に頷いた。

「やれ」
「はい」

気負わない声に同じように返して、伊助は持っていた糸を引く。
――瞬間。


ドォン! とけたたましい音が響き渡った。


「火薬庫だ!」
「くそっ、賊がまだいたか!」
「逃がすな!」

あちこちで混乱している城内を木の上から眺めていると、兵助とタカ丸がふっと音も無く現れる。
二人の先輩は、後輩達に怪我が無いことを確認して微笑んだ。

「帰るぞ」
「「はい」」

二番手の先輩と同じように気負わない声に笑って、四人の子供達は姿を消す。
明日になれば、火薬を使って悪巧みをしていた城が一つ消えたと騒ぎになるだろう。そして六年生の忍務も。
六年生が帰ってくる頃には、きっと彼らの忍務先の城にある新式火薬の情報も入るだろうから。
その時は、また。

火薬委員会、忍務完了。








――
えっと、分かり辛いですがこれ、
A城に新式火薬があるという情報を火薬委員が掴む→六年が火薬を使って悪巧みしてるB城の情報を掴んでくる→その情報を賄賂にして、火薬に囮役を頼む→六年の忍務先がA城なので新式火薬の情報を掴んでくるだろう、ということを見越して火薬が囮役をやる
という流れでした。
あれ、説明でも分かり辛い……?
まああれです、火薬は強かですよねって話です。(無理やりまとめた)

ちなみにこの後六年はそれに気づいて、やられたーとか笑いながら次の五年六年合同実習で兵助に無理難題を吹っ掛ければいいと思います。追いつけ追い越せな五年六年の関係性最高。




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