いっしょに来た山賊の段その後

*妄想過多







何かがツボに入ったらしい守一郎をどうにか宥めて、火薬委員会の面々はほっと息を吐く。
火薬委員会には六年生がいない上、文次郎は会計委員会委員長である。目を付けられたら非常に面倒くさい。
すみません、と文次郎に謝る守一郎を見やる。


「はぁー……守一郎さん、何があんなに可笑しかったんでしょうね」
「さあ……おれも未だに守一郎のことはよく分からないよ」
「ダジャレが好きなだけだと思ってましたけど……」
「あれはもう、笑いの沸点が低いんだろうな……」


兵助の言葉に揃って頷く。
箸が転んでも面白い年頃というものがあるが、守一郎の場合は生まれつきだろう。それを克服するのかはたまた武器にするのか、どちらにせよ今のままでは弱点にしかならない。
どう変わっていくのか、少しだけ楽しみではある。
流れていく思考を断ち切って、兵助はぱんと手を叩いた。


「さて、そろそろ帰ろうか。委員会の仕事もあることだし」
「「はーい」」
「守一郎も帰るよ」
「あ、はいっ」


立ち上がってパタパタと寄ってくる守一郎から、文次郎と左門に視線を送る。
それだけで理解したのか、文次郎は駆けだそうとする左門を引っ掴んで三郎次に手渡した。


「すまんが左門を頼む」
「あ、はい。神崎先輩、帰りましょう」
「ああ! ん? 手を繋ぐのか? 三郎次は甘えん坊だな!」
「……。ああ、もうそれでいいです。離さないでくださいね」
「すまんな池田」
「いえ……」


分かっていない方向音痴に周囲は苦笑。まあこれもいつもの光景だ。
学園へ歩き出す面々の中、文次郎と兵助だけはそっとその場を離れる。
守一郎はまだ理解できていないから何か言うかもしれないが、そのへんは誰かがフォローするだろう。


「さっきの山賊、最近噂になってた奴か」
「はい。人数も情報の通りでしたよ。ただドクタケの目的が不透明で」
「まあな……見に行くしかねえかな」
「ですね」


上級生間で噂になっていた山賊の詳細。
山賊を捕まえたドクタケ忍者隊の目的と企み。
文次郎と兵助は端的に情報を確認しながら木々の上を移動していた。
山賊もドクタケも、その目的によっては学園長に報告しなければならない。


「まあ、あの山賊はほっといてもすぐ潰れるだろ」
「あ、先輩さすが。話聞くだけでも全然組織として機能してませんでしたよ」
「だろうな。俺ならあんな頭についていこうとも思わん」
「なんでも、捕まった二人が相当腕と頭がキレるらしくて。だから一応山賊の形にはなっていたみたいで」
「……それ、捕まったんじゃなくてスカウトされたんじゃないか」
「やっぱそう思います?」


小首を傾げる兵助に文次郎は溜息を吐く。
そういう大事な情報は先に言え。どうせドクタケには行くのだからいつでもいいじゃないかというのが兵助の言い分なのだろうが、どうしてこう、一つ下の奴らはみんなマイペースなのか。
それだけの情報を短時間で引き出す手腕はさすがだけれども。


「……まあいい、とりあえず確認だけしてさっさと帰るぞ」
「はーい。今日は高野豆腐が出るんですよ」
「豆腐の情報はいらん」


軽口を叩きあいながら、柳緑と青藍は森に紛れた。





――
原作バージョンも書きたい。






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